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21世紀後半の世界のエネルギー:水力

 

 現在、地球のエネルギーのほとんどを供給している化石燃料の枯渇問題が深刻さを呼んでいる。そんな中「水」によるエネルギーに今まで以上に関心が集まっているが、残された課題は多々あり、その上で我々は何をすべきかという問題を考える。

 ホームページ「世界のエネルギー」(http://www4.justnet.ne.jp)によると、化石燃料は世界のエネルギーの90%を供給しており、水力・原子力はわずか残りの10%を占めるのみとなっている。しかし、現状のままエネルギー消費を繰り返すと石油は2050年、天然ガスは2070年頃に供給がストップしてしまうとの見解が出されており、85%のエネルギー供給を海外に依存している我が国も当然人ごとのようには言っていられなくなる。けれども人によって見解の仕方はまちまちであり、「各国が力を合わせれば何とか乗り切ることができる」といった安心した意見を述べる例も見られる。それに対して作者はイギリスの豪華客船タイタニック号の例にちなんで「我が地球号も絶対沈まない、何とかなると多寡をくくっているのが現状ではないか」と述べ、その原因を「技術の過信をデータの不確実性」であるとする。

 だが実際に問題は長期に渡って重要であるといえ、我々はこのエネルギー枯渇問題を人口問題・食糧問題などと並べて踏まえる必要がある。2030年頃には化石燃料供給の緊迫感から値上がりの気配が生じ世界的なパニックが起こることがあろうという話もあり、通産省もようやく2030年を目標にして作業を開始した。

 化石燃料が枯渇の可能性にあるというのは、石油などの既生産量は可採埋蔵量の1/2を越えると減退するという理論、いわゆる「Midpoint」理論から予測されているわけであるがその他の燃料は果たしてどう考えられているんだろうか。天然ガスはクリーンで熱効率の高い性質を持ち将来展望はかなり明るいものがあるが、前記の通りその莫大な埋蔵量も2070年頃にはそこを尽きるとされている。石炭はCO2の排出にとどまらず、硫黄酸化物、窒素酸化物、粉塵などの不純物と大量に大気中に放出し、酸性雨など周辺国にも重大な環境汚染をもたらすとされている。原子力は現在世界の主要国の国内総発電力量の3〜4割以上、フランスに至ってはその8割を供給している。しかし最近の東海村の事件にも見られるように原子力にはまだ様々な心配点が残されており、将来に懸念を示されている。

 そんな中ホームページ「水力の特性」において作者は「水力が演じる役割の可能性を探り、これから何に手をつけることが必要かをここで議論する事が重要である」と述べている。水力には再生可能の循環資源、CO2を排出しないクリーンエネルギー、耐用命数が長い、地域開発に貢献、技術は完熟しているなど数々のメリットがある。しかし反面我が国では供給量が少ない、コスト高、自然環境破壊などのデメリットもあり、日本国内では「量」と「コスト」面から完全に失格している。けれど水力による以上のメリットには無視しがたいものが多い。とくに「再生可能の循環資源」であるという点は大きく、地球上に存在する水が地球誕生の瞬間から同量であるという事は水力によるエネルギーには枯渇の危険がないことを意味している。「人口波動で未来を読む」の著者:古田隆彦氏が著書の中で「地球の人口容量は自然環境に手を加えることによって増減させることができる」と述べているが、2100年には80億人に達すると言われている世界人口問題にも枯れることのない水力エネルギーは大きな解決策になると言える。

 乗り越えなくてはならない要素も多く見られるが、数字的には世界の包蔵水力の6割で全世界の電力を供給できることになっており、行き詰まりを打破するために新たな試みが求められる。IEA(国際エネルギー機構)も1993年3月OECDなどと共催で「水力・エネルギーと環境」というテーマで国際会議を開いた。

 惑星物理学者松井孝典氏の「レンタル思想」によると人類は農耕により大地を「所有」したと錯覚してしまい資源も食料も枯渇の危機というところまで来てしまったが、地球と人間は本来の「貸し借り」関係に戻るべきだ、とある。水力によるエネルギーはまさに我々人間と地球の関係に対する大きな解決策だと言え、人類がこれからも地球上で生活していくためにはしかるべき対策によって「水」によるエネルギーをもう一度考えていくことが重要であると言える。

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