NS。レポート   

             危機を招く渇水

                                       041553  山下剛史

 

  人が生きていくために、水は欠かすことができません。そして人(特に日本人)は水を無限の資源の様に思いがちですが、けっして水は無限の資源ではないのです。

  すでにアジア・アフリカの31国が慢性的な水不足に苦しんでおり、今後の人口増加など2045年までには45カ国が水不足に陥ると予測されています。かつて4大文明を育んだ地域も現在は水不足に苦しみ出しています。この水不足に陥るであろう国々はアジア・アフリカに集中しており、北米・ヨーロッパなどは水不足の心配はほとんど無く、地域間格差が増大する一方です。

  非常に深刻な事態となりつつある水不足ですが、実はすでに日本の一部地域は体験済みです。少々古い話なのですが、渇水について述べるのに好都合の事例なので紹介します。あれは私が中学二年生のとき、今から6年前、香川県は未曾有の水不足に襲われました。TVなどでは、高松市(県庁所在地)で夕方4時間を除き水の供給がストップしたことが多く取り上げられていました。マスコミの情報に頼る他県民の人はそれが香川の状況の様に思っていますが、実際には高松市の西隣である国分寺町では朝夕の計8時間水が供給され、その西南に位置する飯山町では24時間水が供給されていました。香川県の飲料水は吉野川から引いている香川用水に頼っているのですが、吉野川の源流である早明浦ダムが貯水量減少で放流を削減すると、香川用水への割り当てがすぐに削減されます。この渇水で香川では死者まで出たというのに、吉野川には相変わらず水が流れつづけていました。香川県知事が徳島県知事に吉野川から香川用水への水供給を増やして欲しいと嘆願しても吉野川の環境保護の名の元に一蹴されました。

  さて、同じ香川県での地域格差、水源を持つ県と持たざる県の格差は分かってもらえたでしょう。もしこれが日本で無かったならば、香川と徳島の武力衝突に発展しているかもしれません。いえ、世界ではすでに水をめぐる戦いはすでに始まっています。貴重な水、水源をめぐっての戦いです。水不足がさらに深刻化すると争いもさらにエスカレートすることでしょう。

  日本では国土庁の水資源白書でも近年の少雨を危惧して、水の再生利用、合理的な水の利用、水資源の有効活用、水源の涵養機能の充実などが述べられています。当然ながらお役所のやることですから竜頭蛇尾に終わる可能性があります。水不足というのは、天候がどうにもならない以上、人間が節水、合理化、自然保護に努めねばなりません。全ての人が水の大切さをきちんと認識し、有効活用を心がけるしかないでしょう。

  世界では、さらに大変です。いくら少雨が続くといっても日本は水の豊かな国。中東・アフリカの国々とはわけが違います。砂漠化の進む国では、少々の合理化で水が確保できるわけはありません。ただ、海に面した国では淡水化プラントを設置し、海水を淡水に変えることも可能ですが、いかんせんこの設備にはお金がかかりますし、環境に悪影響があるという説もあるようです。現在のところ、オイルマネーのある一部の中東の国で設置が進んでいます。幸い、ODAという取り組みがあるので、これを利用し、水不足に苦しむ国々に手を差し伸べるべきでしょう。地下鉄が無くても人は生きていけますが、水が無ければ人は生きていけないのですから、国民の血税で行われるODAは有効に実施してもらいたいものです。

 

  実は、水を海上輸送するという会社もあるのです。現在、日本郵船が経営権を獲得しているノルディック・ウォーター・サプライという会社がそうです。この会社の方法は、1万から2万tの水が入るバックを、タグボートで曳航して目的地にまで運ぶというものです。水のあまる国から水の不足している国へと水を運びます。他のところではタンカーを利用して水を運ぶという手段もあるそうですが、こちらは費用がかかりすぎるためあまり行われない様です。日本企業の進出でどうなるかはわかりませんが、皆が納得できるよい仕事をしてもらいたいですね。

  こういった問題を解決するには、小さな積み重ねというのは、不必要ではないですが、ナンセンスだと言えるでしょう。それはまさに焼け石に水ですよ。人々が一致団結し、大規模に植林だの、ダム建設、淡水化プラント建設、水の輸送などに取り組み、水の分配を公正に行い、水に飢える人がいなくなる様にしたいものです。効果的な対策が無いだけに、取り組みの難しい問題ですが、生物が生き続けるためにも、どうにかしなければならないのです。

 

   参考HP

http://www.nla.gp.jp/welcome.html     国土庁
http://www.moc.go.jp/index-j.html     建設省
http://www.idi.or.jp/vision/index.htm   世界水ヴィジョン川と水委員会

 

   参考新聞

       朝日新聞1月9日
       朝日新聞5月27日
       産経新聞1月11日
       産経新聞2月(詳しい日付は忘れた)

 

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