第5章 水はどこからきたのか?
§1 水の誕生(なぜ地球上に水が存在するのか)
宇宙のはじまり、銀河系の誕生、原始太陽の形成、地球の誕生,水/海の誕生
§2 生命の誕生(なぜ地球上に生命が発生し、今まで存在できたのか?)
- 原始地球上における生体物質の生成(化学進化)、生命の誕生、生物の進化,
- 豊かな動植物が棲む地球への変化と時間
水の起源をたずねることは、
- 1. 宇宙のはじまりをたずねること
- 2. H(水素原子), O(酸素原子)がなぜ存在するのか?
- 3. H2Oという分子がなぜ地球上に液体として大量に(海として)存在するのか?
- 4. 海の中で生体分子がいかにして合成されたのか?
- 5. 生命はいかにして発生したのか?
- 6. 生物はどのように進化していったのか?
といった問いに向かい合うこと。自然科学の大課題である。
Q・宇宙で最も多い元素は? 水素:93%、He(ヘリウム):7%
他は1%以下
Q・では、酸素(O)など他の元素はどのようにして生成したのか?
B. 星の進化
銀河系の誕生(120億年前)
107 から108 Kの高温にある素粒子(ガス状)が膨張しながら部分的に密度の高い部分をつくった(引力が大きい部分)→ 他のガス集団を引きつけ、さらに大きなガス集団をつくった →渦を巻き始めた。あるものは丸く/長円形に/不規則な形に。わが銀河系もその一つ。全宇宙には同様なガス集団が1000個あると言われている。
光を発しているのは恒星で水素の核融合の結果だ。太陽もその中の一つ。
92種の元素形成プロセス=星の進化
超高温状態での核融合反応によって水素原子核(H)からヘリウム(He)がつくられ(H燃焼)、さらにヘリウム(He)から炭素(C)、酸素(O)がつくられる(He燃焼)。
He, C, Oなどが核融合してさらに重い原子核がつくられ(重イオン反応)、最終核融合反応生成物として最も安定な原子核である鉄(Fe)がつくられる(e プロセス)。
このようなプロセスが星の一生であり、星は平均100億年の寿命がある。
その後、星は自爆して死を迎える(これが超新星の爆発である)。この爆発により鉄は核分裂して様々な大きさ(重さ)の原子核となり、それらがまた結合して鉄よりも重い原子核がつくられる。ウラン(238U)は自然界の中で最も重い原子核である。
これらの核反応によりどの銀河系でも共通な92種の元素が出そろったと考えられている。
温度 核反応 名称 1. 107 K 4 1H ---------> 4He H燃焼
2. 108 K 3 4He --------->12 C He燃焼 4He + 12 C ----->16O
3. 109K 2 12 C --------->20Ne + 4He 重イオン反応 2 16O --------->32S
4. >109 K 56Fe ---------> 各種の原子核 + n(中性子) g -プロセス nを取り込んで各種原子核を再構成。その中の一つが238U である. 註:左肩の数字は質量数(陽子数+中性子数)。 核反応の過程で質量が加算されることに注意。 |
H, O原子核が107 K以下に冷えると負電荷をもった電子と結合し、H, O原子がつくられる。
H, O原子が出会うと安定な分子であるH20が形成される。
c. 原始太陽(protosun)と惑星の形成(約50億年前)
銀河系の中の超新星が約50億年前に爆発(gamma g -プロセス)、飛び散った元素(92種)<これを宇宙塵という>が再び集まって密度の高い集団(星)を形成した。その一つが太陽(protosun)であり、太陽系惑星である。
太 陽;半径:138x104km (地球の200倍)
重さ:全惑星の700倍
十分大きく、内部圧によって内部温度は1400万度(107 K )となる:核融合反応が開始できる温度。
4 1H ------>4He + energy(太陽エネルギー)
2 2D -----> 4He + energy
37x1020 KW/year
(地球に届くのはその20億分の1)
D. 原始地球上で起こったこと
・重い元素は地核を形成した。岩石成分:鉄、アルミニウムの硫酸塩 (Fe2(SO4)3, Al2(SO4)3 )
鉄、アルミニウムの酸化物+珪酸塩
( Fe2O3/Al2O3/SiO2 )
ナトリウム、カルシウム、マグネシウムの珪酸塩/水和物
( Na, Ca, Mg・SiO2・H2O)
・軽い元素は大気成分となった。
・CO2 , CO, H2O, NH3, CH4, H2S, HCl
・H2 ,He (軽い気体:大部分が宇宙空間へ逃げた)
cf. 木星の大気: H2 ,Heが主成分
* O2はほとんどが岩石中にとらえられた(ケイ素、金属酸化物として)。
原始地球大気中には酸素ガスはほとんど無かった。
水蒸気は雲となり激しい雨となって降り注ぎ、また太陽熱/地熱によって蒸発を繰り返していた。
大気中では絶えず雷(放電)が発生し、同時に太陽からの強い紫外線が地上に注いでいた。
・HCl(gas)は雨に溶け、強酸性の塩酸になる。強酸性の雨(水)は岩を溶かし、
Na+, Ca+2, Mg2+, Fe3+が溶けた河となり海となった。
・CO2の行方(水星、金星、火星では大気の主成分なのになぜ地球では違うのか?)
CO2は海に溶け、Ca2+, Mg2+と出会って沈殿物(石灰岩)となった。
CO2はサンゴが発生した後は、サンゴの身体を作って固体化した(珊瑚礁)。
→海の存在が地球のCO2量を減少させた.
・原始地球大気中で起こったこと
環境:激しい雷雨、強い放電、紫外線
再現実験:ミラーの実験(図参照)
結論:有機化合物(アミノ酸、糖、核酸塩基)が生じた。
生成した有機化合物は海に溶けた(太陽からの強い紫外線によって分解されずに蓄積していった)。
海の中で有機化合物どうしが反応してより複雑な分子が形成されていった。
ここまでが、化学進化の時代(原始地球ができてから約10億年間の約出来事)。
E. 原始の海の形成(30-35億年前)
水素(H2)のすべてが宇宙空間に飛び散ってしまったのではなく、一部は岩石中に閉じこめられた。火により酸素と反応してH2Oをつくり、一部は水蒸気として大気中に噴出し、また一部は、岩石中に水和物として閉じこめられた。
地核内部に閉じこめられた水が火山活動にともなって岩の間から噴き出し原始の海水となった(30-35億年前)。
海(液体の水)が出現する基本条件: 0〜100℃
Q:9つの太陽系惑星の中でなぜ地球だけが海(液体の水)をたたえているのか?
・A: 第一条件・太陽からの距離
惑星 水星 金星 地球 火星 木星 土星 天王星 海王星 冥王星
表面温度 330 200 15 -30 -130 -150 -190 -200 -(℃)
地球より太陽に近い惑星では、水はすべて水蒸気、地球よりも外の惑星では氷結している。
・B:第二条件・サイズ
月は、太陽からの距離が地球と同じであるにもかかわらず水が無い。なぜか?
月は地球よりの小さく重力は地球の1/6。すなわち、水分子を引力圏内にとどめておくことができず、宇宙空間に逃げてしまった。
地球は、太陽からの距離と大きさの条件がちょうどぴったりなのだ!。
海の存在の意味
・海は大気温の変化を和らげる。
水の蒸発熱、比熱が大きいので気温の変化が小さくなる。(月では、昼の温度が110℃、夜の温度が-180℃)。
地球では砂漠ですら、昼夜の温度差が30°を超えることがない。
・海は種々の化合物を溶かす
イオン性物質(Na+, Ca2+, Mg2+, Cl-など)だけでなくアミノ酸や糖などの有機化合物、二酸化炭素、酸素)をも溶かす。実は、92 種の全ての元素が溶けている。
*海の中で生成した有機化合物は、強い太陽光(紫外線)がとどかないので分解が免れる。
・海は原始生命発生の場となった。
また、生命の進化の場、生物を支える源となった。