川と人間生活

高麗川

 

 私は、埼玉県の中央部に位置する坂戸市で生まれ育ちました。坂戸市内には幾つかの川が流れていますが、その中で私にとって特に愛着のある川は高麗川です。そこで、まず私と高麗川との関わりについて述べたいと思います。

 私が初めて高麗川のことを知ったのは、3、4歳のころ、当時通っていた保育園でのレクリエーションの一環としてそこに行ったときのことです。私たちの保育園は越辺川という別の川の近くにあったので、普段はその川にばかり行っていたものですが、何故かあるとき少し遠出をして高麗川に行くことになったのです。そのときは川の違いなどほとんど意識していませんでしたし、大して記憶には残っていないのですが、後にその川は私たちが普段遊んでいたのとは別の川で、それら2つの川は実は合流していたのだということを知りました。その後も、何度か保育園時代には高麗川に遊びに行く機会がありました。

 その次に私が高麗川に行ったのは、小学校2年時の遠足のときのことです。そのとき私は、アメンボを捕まえたり、友人と水を掛け合ったりしたことを良く覚えています。また、アメンボはかなりの数いたのですが、越辺川にはよくいたザリガニがほとんどいなかったので、なぜだろうと不思議に思いました。あまりにはしゃぎすぎて膝にいくつかすり傷を負いましたが、保育園の卒園以来かなり久々に川に行ったのでそれだけ興奮していたのではないかと思います。その時を最後に、私は川で遊んだ記憶はないのですが、その後隣の毛呂山町などに行く用事があったとき、高麗川にかかる橋を何度か通り、その度に昔遊んだ川だなと懐かしく思ったものです。

今回のレポートを機に、私は数年ぶりに高麗川に行くことにしました。時間は昼の12時頃、天気は快晴でした。そこでまず驚いたのは、川幅が2m前後で、意外にも狭いということです。ただ、かつて遊んだ場所の川幅はかなり広かったですし、坂戸市の南部には高麗川大橋という大きな橋がかかっているので、訪れた場所の川幅がたまたま狭かったということで、坂戸市を流れる高麗川の川幅が概して狭いというわけではありません。川の両岸には草が生い茂っており、堰や堤防のようなものは見当たりませんでした。水は、比較的澄んでいるように見えました。水面にはアメンボは見当たりませんでしたが、水中には多くの生物が生息している様子が窺えました。具体的な生物名は良くわかりませんでしたが、水がきれいだからこそこのように多くの生物が生息しているのではないかとも思いました。全体的な印象としては、閑静な地域を流れる清流という感じがしました。

 家に帰り、母親に20‐30年前の高麗川の様子を尋ねると、アメンボやおたまじゃくしなどが見られるきれいな川であったとのことでした。その当時からの変化としては、公園やトイレ、ウオーキングコースなどが整備され、今では市民の憩いの場になっているのではないかということでした。また、近年高麗川大橋の北に新たに橋が建設されたのも大きな変化ではないかということです。

 続いて、ウェブページを検索してみることにしました。そこで得られた情報を要約すると、高麗川は、延長約32Km、流域面積95Km2で、埼玉県の刈場坂峠(秩父郡横瀬町、比企郡都幾川村、飯能市の境)付近を源流とし、飯能市、日高市、毛呂山町を流れ、その間に長沢川、宿谷川、などの川が流入し坂戸市で越辺川に合流します。かつて高句麗からの亡命者を受け入れた高麗郡(現在の日高市周辺)を流れることからこの名となり、川の特徴としては、頻繁に蛇行を繰り返す、埼玉県でも有数の、きれいな水が流れる川であり、BOD値の比較による埼玉の清流ベスト10では、何と1位(高麗川大橋付近)と3位(天神橋付近)に入っています(平成13年度 埼玉県環境白書)。また、古い取水堰(固定堰)や小さな木の橋が数多く見られ、流域に古くて貴重な土木構造物、それをとりまく豊かな水と緑が残っている、恵まれた環境にある川のようです。そのことと、交通の便がよいこととが相まって、近郊の景勝地として多くの観光客が訪れているし、水生昆虫や、野鳥や植物が豊かなので子供たちや市民団体の生物調査フィールドとしても人気が高いようです。また、下流部の坂戸市には、潜水橋(洪水になると水没してしまい、通行不能になる橋)が残っていることも貴重なのですが、それは裏を返せば、急激な増水により鉄砲水になりやすい川であるという高麗川の難点を示しているともいえます。

とても水質が良いということなので、次に、なぜそのような清流が保たれているのか調べてみました。埼玉県が行った調査によると、流域の生活排水処理率は約68%であるものの、上流域の人口密度が低いこと、上流では森林が流域面積の約45%を占めること、自然河床を残していること、大型合併処理浄化槽等の効果により良好な水質が保たれているのではないかということでした。こうした流域の特性からすると、現状の水環境の維持は十分に可能だと考えられているようです。また、市町村による清流保全の取り組みとしては、坂戸市では市民参加による「ふるさと川づくり事業」が始められているし、日高市では観光客のゴミ持ち帰り運動が展開されているとのことでした。

 以上のことを踏まえて、高麗川について改めて考えてみることにしました。自分にとって驚きだったのは、高麗川は埼玉県の中でも有数の清流であるということです。ということは、自分の生まれ育った場所の近くにこのような川が流れており、そこで遊べたというのはとても得がたい経験であったのですが、自分は全くそうとは意識していませんでした。自分が見た高麗川の姿は特に整備されておらず、自然の姿のまま残されているという印象でしたが、上記で調べたとおり大型合併処理浄化槽などが整備されており、清流を保護するという意味での管理は適切にされているのではないかと思います。ただ、上記の通り急激に増水してしまうこともあるようで、それに関しては堤防など自治体による必要な措置は講じられているのかということは疑問に思いましたが、埼玉県の方針としては、上流部の自然河床や河岸を維持しながら現況河道を極力生かした河川整備を行っており、深刻な増水になることはないようなので、その点に関しても問題ないと言えるのではないでしょうか。むしろ、過剰な河川整備が行われると、私が見たようなのどかな高麗川の姿が失われることになってしまいかねず、そうなると本末転倒だと思うので、現状のような整備方針でよいのではないでしょうか。また、清流を守ろうとする市民の取り組みや、観光や生物観察の人気スポットとなっていることからして、高麗川はとても愛されているということができると思います。私としては、これからも高麗川は水がきれいで様々な生き物をみることのできる貴重な場所として人々に愛され続けてほしいとやはり思うので、清流を保つために必要な取り組みが続けられることを願っています。これから何年か経て、自分が再び高麗川を訪れる機会があったときに、かつての自分のように子供たちが水と戯れており、アメンボやおたまじゃくし、サワガニなどが生息し続けているような環境が残されていたとしたら、とても心が和む光景であることでしょう。これからの高麗川には、そのような期待を抱いています。