「川と人間生活」

大岡川

(神奈川県横浜市)

はじめに

私の住んでいる神奈川県横浜市南区には、大岡川、中村川、堀割川という三本の川が流れています。区の真ん中に大岡川が流れ、その支流としての中村川、さらにその中村川の支流の堀割川が区の端で枝分かれするように流れています。大岡川を遡ると隣の港南区にある上大岡駅付近で二つに分かれ、笹下川(大岡川)と日野川になります。南区から大岡川を下ると中区を通り、そのまま桜木町で海に流れ込みます。言い換えれば、港何区を流れてきた笹下川と日野川が合流して大岡川と名前を変え、南区、そして中区を通り、横浜港まで流れているのです。笹下川は大岡川と呼ばれることも多く、その源流は港南区のはずれの円海山にあるとされています。私の家は、そんな大岡川の目の前にあります。

大岡川概要

大岡川は横浜市で二番目に大きい、二級河川です。横浜治水事務所工務部河川事業のホームページ(*1)によると、流域面積は35.6km2で、総延長は28kmです。南区、中区を流れる大岡川に自然の岸はすでになく、両岸をコンクリートで固められています。住宅街の間を流れているため、市民生活に合うように開発されています。南区を流れているあたりは大岡川プロムナードと呼ばれる地域で、川の両岸にはたくさんの桜が植えられ、横浜市でも有数の桜の名所とされています。春になるとたくさんの出店と花見客でにぎわいます。特に弘明寺駅の近くは水深も浅く、川まで降りる階段や反対岸に渡る飛び石なども整備されているため、春から夏にかけて多くの子供連れを見かけます。また、上大岡駅と弘明寺駅の間には染めもの工場があり、大岡川の水を使って染物をしています。中流域~河口付近には個人ボートがいくつも停泊しており、また、近くの横浜商業高校のカヌー部の生徒が練習している姿をよく目にします。

川には様々な生き物が生息しています。特に野鳥は以外なものがいることもあり、観察しがいがあります。よく見かけるのはカルガモやマガモ、下流域ではカモメも飛んでいます。慎重に観察すると、アオサギやゴイサギを見かけることもあり、またどこから来たのか白鳥が一羽住みついています。大岡川に住む生き物を取り上げているホームページ(*2)もあります。このページでは魚や鳥の写真のほかに、桜並木の写真もたくさん載せています。また大岡川の成り立ちの様子も分かりやすく書かれています。

私と大岡川のかかわり

生まれたときから大岡川のそばに住んでいて、小さなころは幾度となく親と散歩した記憶があります。小学生の時は兄とよく釣りに出かけました。大きな魚は取れませんが、小さなハゼなどを釣って楽しく過ごした記憶があります。小学校の社会科の授業では大岡川の成り立ちを習い、実際に川沿いを歩いて調査したり、近所の神社に行って碑を見たりしました。大岡川は、江戸時代に入り江をうめ立てて出来た川で、その埋め立ての様子を劇にしたこともありました。また、上大岡駅の近くにある捺染工場にも社会科見学で訪れ、染物のこととともに大岡川のことも学びました。中高生になると学校で何かしたり、川で遊ぶために出かけたりすることもなくなりましたが、それでも高校の帰り道など、あえて川沿いを通って帰ることもしばしばありました。今でも春になれば必ず川沿いの遊歩道を歩いて桜を観察するし、春以外でもよく犬を連れて散歩をします。私の家の目の前は何の変哲もないコンクリートの川なのですが、ここから川を遡ると、少しずつ野鳥の数も増えてきて穏やかな雰囲気が漂います。

私にとって大岡川は必ずなくてはならないもの、というわけではありません。しかし閉塞的になりがちな住宅街にこの川があることで、人々の気分転換の場になるし、人が集まってきます。私にとっても心休まる場所のひとつです。

大岡川の汚染

前にも書いたとおり、大岡川は江戸時代に埋め立てによって出来た川です。大岡川と中村川に挟まれている地域は吉田新田と呼ばれ、昔は入り江でした。このあたりが自然のまま残されていないのは元から人工的に作られたから、という理由からかもしれません。いずれにせよ、そのようにして出来た大岡川はそれ以後市民生活に利用されてゆきます。ここで特筆しなければいけないのは、捺染工場による汚染です。今でこそ目立った汚染はないものの、3040年前はこの工場による大岡川の汚染は甚だしいものだったと聞きます。染物工場ですので、たくさんの水を使い、また染料も使います。それらの汚水をそのまま大岡川に流していたそうです。この工場のそばの川は、染料で赤や青に染まっていたとか。

もちろん今ではそのようなことは無く、弘明寺付近の水深が浅めのところでは川を泳ぐ魚がよく見えます。ここでよく見られる鯉は、川の汚染を知るために放されたと聞きます。川が汚れると鯉は住めないからだそうですが、すこし可哀相な気がしてしまいます。しかし目に見えないからといって、川が本当に綺麗で生き物にとって住みやすい状態である、とは言い切れません。私の家の前の水などは、ついぞ透き通ったことがありません。鯉もここまでは降りてきません。これでも汚染されてないといえるのでしょうか。

終わりに

私は横浜市の市民で、南区の区民でありながら、大岡川に関する現在の活動についてあまり知りません。あまり綺麗ともいえない川ですが、それでも私はいつまでもこの川を見てゆきたいと思っています。そのためにも、この川の環境を守るためにどのような活動が市の方でなされているのか、また市民レベルでなされているのか、とても気になりました。もとは人間生活のために作られた川ですが、いまでは人間だけのものではありません。大岡川に行けば出会える鳥や魚たちは、とても貴重な存在です。この川をもっと自然に近い形にしろ、というのではなく、これからも彼らと共生できるような環境にしてほしいです。市民として、区民として、川のそばに住むものとして、私もこの大岡川に対して出来ることがあるでしょうか。これから模索してゆきたいと思います。

参考ウェブサイト

*1. 横浜治水事務所工務部河川事業

   http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/07/1945/hamasui/kasen/hp/ohoka.htm

 

*2. 岸辺の散歩道 http://www1.ttcn.ne.jp/~hoo/