純粋化学時代(自然科学としての化学)の確立期 

  

A. 自然科学確立の基礎条件   (1650年頃)

 社会的条件

 文化的条件

・錬金術の熱がさめる

・経験哲学/思想の台頭

  F. Bacon:経験的事実、実験事実を基礎におく考え方を重視

・他の分野も自然科学が学問として確立する

  天文学:コペルニクスの地動説(1500)

  力 学:ニュートン(1642-1727)、質点の力学

  粒子論:デカルト(1640)

 

B. 純粋化学(自然科学としての化学)の確立

 R. Boyleの「懐疑的な化学者(The Sceptical Chemist)」(1661)

(1)化学の目的

「それまでの化学(Chemistry)の根本的な禍は,自己の利益のみを追求した点にある。真理は真理のために追求されねばならない。」

「化学者は今日まで金属の製造や金属の転換,医薬の製造などの仕事を専らやってきた。しかし,私は,化学を(天文学,力学のごとく)自然科学の学問とするための計画を立てた。私のこの計画は実験と観察によって実現できるであろうと信ずる。」

 

(2)科学(学問)の方法論

  帰納的方法論(induction)を提唱した。

「人が科学の進歩を目指すならば,実験をなし観察を行うことに全力を注ぐべきであって,いかなる理論も,それと関連するすべての現象を予め検討することなしには立てないことである。」

(3)物質観

「もしもある物質がもはやそれ以上簡単な成分に分解されないならば,それが元素である。」

「物質の究極(→元素)は,性質の中にではなく,物質それ自身の中に探すべきである。」(性質は物質固有のものと考えた)。

 

粒子説

「万物は唯一の実体たる普遍物質(微粒子)から成る。原子はすべてこの微粒子から成り立っているが,元素が異なるに従って大きさ,形,重さが異なる。化学現象は粒子間の機械的作用によって起きる。」

 

Newtonによる「酸」の説明

(「酸の本性」1710より)

「酸とは大きな引力をもつものであり,この引力に酸の作用がある。

酸の溶解作用については,酸の粒子はその大きな引力によって金属のまわりに集まり,そのあらゆる面にぴったりとくっつき,その粒子をゆり動かし引き離す。これが溶解である。

酸の粒子がその大きな引力によって突進するとき液体を動かして熱を生じるのが溶解の熱である。

また,金属粒子のあるものをばらばらにし,それを空気(気体)に変えるとことがある。これが溶解のときに生じる気泡である。」

 

C. 「燃焼とは?」への探求

フロジストン/燃素(Phlogiston)説: Shtahl(1660-1734)

「燃える物には、燃素(Phlogiston)という微粒子が含まれる」

 

  燃焼: 可燃性物質  -------> 燃素(↑) + 灰(↓)

                        灰:不燃性物質 

*木炭は燃えても灰を残さないのでほとんど燃素からなる。 

 金属は燃えるか?

    金属  ------->  燃素(↑) + 金属灰(↓)

 

 *金属冶金(metallurgy)はこの逆プロセス

【例】: 銅灰  +  木炭  ------->  銅

 

*疑問点:金属灰は元の金属よりも重い、という事実をどう説明するか?

 

有効仮説:フロジストン/燃素(Phlogiston)説

 1700-1800年(100年間)、著名な化学者らにより信奉された。

 

 キャベンディッシュ(Cavendish)(1766):水素の発見者

金属  +  塩酸 -------> 塩  + “水素”(火の空気)                    

 (金属=灰+燃素)+ 酸 -------> (塩=灰+酸) + 燃素

 

   “水素”:空気よりも軽く, 可燃性の気体 →燃素に限りなく近い 

 

 プリーストリー(Priestory)(1774):酸素の発見者

“水素”の燃焼:水の生成

 “水素”   +  “酸素” ---------->  水

(“水素”=燃素+水)+ (“酸素”=脱燃素 空気)

   

燃素は 脱燃素 空気と結合して空気になる。

 

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