2003NSIII 「自然の化学的基礎」 課題 I

「川と人間生活」 平作川神奈川県

 

                    林 雄介

平作川について

 私の実家は神奈川県の横須賀にある。そこは海に囲まれて緑も大変豊富な三浦半島にあり、そこでもっとも長い川が私の実家近くを流れる平作川である。この川は二級河川でありその全長は定かではないが、海近くの下流になるとかなり幅も広く、いたるところにモーターボートさえも停泊されている。川は下流のほうで処理された下水とともに流れていき、黒船とともにペリーがきた浦賀の久里浜港へと注いでいく。平作川は三浦半島では割と象徴的なものと言えるが、これに沿って上流に上っていけば三浦半島のすばらしい自然を体感することができる。私はこの川にはとても思い入れが深く、幼いころにはしょっちゅうザリガニやサワガニなどをとりに遊びに行っていたものであるが、ここでは平作川の現在と過去の環境に触れ、これからどういった環境になっていくのか、そうしてどうあるべきかについて言及していく。

 私の実家近くの平作川の状況はコンクリートでまわりを狭く固められて細々と流れており、生活廃水も注がれているので昔からあまりきれいではない印象があった。普段はわりとゆっくり流れているが、ひとたび雨がふると、その水かさはとたんに増して激しく流れていく。何度か小さい子供が流されてしまい死亡事故にまでなったこともある。他川に比べて、場所によっての姿が大きく異なりまったく違う川を見ているようである。先日、実家に帰った平作川の状況を見に行ったのだが、以前とあまり変わっておらず相変わらずのドブ川のように見えた。それでも、私の両親が言うには昔と比べてだいぶ水質がよくなり、それは自治体や市民団体のおかげであると言っていた。昔は今よりももっと生活廃水を垂れ流しにしていて、洗濯で使った泡つきの汚水などがいたるところから注いでいたそうだ。私の幼いころは、友達とこの生活廃水が流れてくる下水管の中に潜っていって生き物を捕まえたり、探検などをよくしていた。その水が大変汚かったことなどはまったくお構いなしにである。以前は私がしていたように、小さな子供が川の近くで遊んでいたのを見たものだが、帰省w?した際に見に行った限りではまったく子供たちを見かけなかった。やはり、生活汚水の問題があるからであろうか。水質がよくなることを願うばかりである。私が小学校の高学年の時に、友人が夏休みの自由研究で平作川について発表していたのが記憶に残っているが、その友人は川のなるべく上流から河口までの様子を写真に収めながら観察して事細かにつづっていて、それを見た私も是非見に行きたいと思って上流のほうに遊びにいったのを覚えている。その平作川の源泉は、三浦半島で標高が一番高い大楠山というところにあり、そこでは自然が豊富に残っていて、やはり幼いころにはよく遊びにいったものであるが、その山は家の近所にある衣笠山というところからつながっているために、平作川上流を見にいった時にも丸一日かけてそこから歩いていった。上流のほうはとてもきれいであった記憶があるが、先日見に行ったときは中流から河口近くまでと同じようにコンクリートで固められていて、とても人口的な感じがしてなんだか悲しくなってしまった。これは平作川上流の大楠山近辺では、横須賀横浜道路という高速道路の増設を行っているために、都市化をうたってさまざまな工,を行っており、そのひとつであるということを両親から聞いた。自然が豊富で有名な三浦半島の、その一番高い大楠山でも都市化のための工事が行われているとは悲しい限りである。コンクリートで固められた平作川は、氾濫することはないだろうがなんだか窮屈そうで悲鳴をあげているようにも見えた。両親から聞いた話しでは、私が生まれる以前に記録的な台風がきたことがあり、その際に平作川が氾濫して洪水となり多くの家が浸水してしまったことがあったそうだ。そのことから、川を整備したということもあるらしい。しかし、緑豊富な山のふもとを流れる上流まで整備されてしまうと自然の趣もなくてがっかりしてしまった。

 昭和30年代ころの平作川の写真を見たことだあったが、とてもきれいでまわりには植物が生えていて私のイメージする田舎の川とぴたりあい、現在の川とは似ても似つかずびっくりしてしまった。整備されていないとやはり氾濫の大きな心配はあるが、自然として考えれば昔のほうが景観はすばらしいし、川自体の雄大さがうかがえてよくみえる。しかし、現代の都市生活と融合させるためには川の整備は必要であり、かつ水質の良さを保持していかなければならない。平作川についてのWeb-pageを検索したところ、市民団体が運営するページを見つけることができた。このページのタイトルは「WE LOVE 平作川」で、その内容は彼ら市民団体の平作川における活動内容と平作川の状況報告が載せられている。これは、源泉から海に注ぐまでの川周辺を写真を交えてわかりやすく紹介している。また、彼らの2002年に行われた平作川「クリーン大作戦」と「ゆめトーク」という清掃活動報告なども取り上げられており、彼らが発行する「平作川原版」という新聞のレビューも載せていておもしろい。こういった市民団体の活動があるからこそ、平作川の現w?状が守られていて、ごみ問題なども改善されていくのである。もうひとつのWeb-pageは個人によるサイトで、私の小学校の友人の自由研究のように河口から源泉までをたどって、写真と一緒にわかりやすく紹介している。これは、あまり知られていない細かなところまでたどっているので、地元の人でも新たな発見があったりと見ていておもしろいだろう。

 平作川は三浦半島を代表する川であり、私は小さいころからこの川を見て育った。一見してあまりきれいな川とはいえないが、それでも市民団体などの努力によって今以上に汚れないように保たれているのである。都市化のための上流のコンクリート整備は少し残念ではあるが、人々の日々の心構えによって汚染されていない、昔の写真で見たようなきれいな景観ができていくのではないだろうか。そうすれば、平作川も私たちを裏切りはせず三浦半島の象徴的な川としていつまでも雄大に流れ続けると私は考える。

 

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