Going to EXTREMES”を見て
水のあるところに人間はいる。
水の無いところには人間はいない。
 
「シリーズ 極限への旅 going to extremes」  By Nick Middleton

 

概説

「地球上で最も暑いと言われる土地、寒い土地、雨が多い土地や乾燥した土地に住む人はどんな暮らしをしているのだろうか?」そんな問いからこの番組は始まる。ニック・ミドルトンが実際に人間の住む極限の地を旅する(going to extremes)。世界一暑い場所としてエチオピアのダロール、寒い場所としてシベリアのオイミャコン、湿潤な土地としてインドのマウシラム、乾燥した所としてチリのキヤグアへ行く。

 

世界一暑い場所:エチオピア ダロール(ダナキル砂漠北部)

                 

世界一暑い理由

地熱(水場は温泉)

アラビア半島からの乾いた風

雲ができない(雨が降らない上に、太陽の光を遮るものがない)

アフリカ大地溝帯に属する(海抜?100メートル)

最高気温:50?(塩の採掘場)、午前10時の段階で43?(エリダール)。夜でも30?以上である。

  

    写真1           写真2          写真3                                            

写真1 人々の食文化

ヤギの乳と小麦粉のようなもので作ったパン、水。

野菜や肉がなく、健康上良くない。

 

写真 2:「ガラ(火の風)」が体力を奪う

 この暑い中、男性は「よくわからないゲーム」を2チーム対抗でやる。

 1チームが50人から100人。4時間ほど走り回る。

 

写真3 水汲みの仕事(エリダールにて)

水汲みは女性の仕事である(男性が行くことはない)。毎日夜明けとともに起床、食事を作り、そして片道20キロ離れた水場まで水を汲みに行く。なぜ、水場の近くに住まないのかというと、水場の近くの草は家畜に食べられてしまっているからである(アファール人は遊牧民。生活の中心は家畜である)。水場はオアシスではなく「温泉」である。地面に穴を掘り、その穴を守るようにして石を積む。蒸気が石を伝って入れ物の中に溜まる仕組み。1日でバスタブ2杯分ほどの水が取れる。

写真:画面中央の後方にあるのが水場。

 

ニックの感想

原始的なエネルギーを感じる。ここは留まるような場所ではない。

                 

塩の採掘場              ダロール 今では無人の廃墟   こんなに暑い所でも川は流れる

        

周りには何もない           塩の採掘場で休憩をとる人     採掘場まで往復6日かかる

*「人が住んでいる中で世界で一番暑い場所」は塩の採掘場で働く人々の拠点となっている「ハメデラ」(50?)であった。


世界で一番寒い場所:ロシア オイミャコン

世界で一番寒い理由

大陸の中心部に位置する(海から遠いために、気候が極端になる)

高気圧がはる

雲がない(熱が夜に逃げていく)

 

 

チェルスキー山脈とベルホヤンスク山脈の間にある(「お椀の底」のような地形)

-44℃、これはまだ暖かいほうである。幅50km、長さ200kmのなだらかな谷。

お椀の底のような地形が影響して「高地では暖かく、低地では寒い」という逆転現象が起こる。

人々の食文化

                 

生き延びるために「高タンパク・高カロリー」    棒を奪い合うゲーム。        生き延びるために
になる。毎食馬肉。                食後にみんなで集まってやる。    写真:罠にかかったウサギ。

 

食料を得るチャンスを逃さない。水が不足する心配はまずないが、食料が不足する可能性はおおいにある。網を仕掛け魚を捕り、罠をはり獲物をとる。獲物は自然と冷凍されてしまうので、いつ罠をとりに来てもよい。

 

 

ニックの感想

人はどんなところでも適応できる。しかし、ここで暮すには強い肉体と強い精神が必要である。

         

ホルスホリダ=一番寒い      お墓。骨が地表に出てくる。    トナカイの群れ。国有財産である

        

気候に適応してヤクートの馬   校庭で遊ぶ子ども達。        食卓。肉ばかりである。

 


世界一雨が多い場所: インド マウシンラム

世界で一番雨が降る理由

夏の間に陸地が温められる(→空気が上昇)

そこにインド洋から来た水分を沢山含んだ空気が流れ込む

湿気を含んだ風がカーシ丘陵(マウシンラムのある丘)にぶつかり上昇、雨を降らす。

 

雨季は6月から9月。大量の雨が何日も降り続くが、乾季には逆に水不足になる。1861年には年間降水量26mを記録する。また1995年6月16日には1日で1.5mの雨量を記録(オックスフォードの年間降水量の2倍)。

人々の食文化

 

雨季の中でも、雨の強い日は鉱山や農場が休業になり、人々の収入が減る。さらに強い雨の影響で、外出する人がいなくなる。肉屋は収入を得るために1軒1軒家を回って肉を売ることになる。肉は放っておくと1日で腐ってしまうので、燻製にして保存する。

雨季の間は家にこもっていなければならず、退屈である。そのため、どうやって退屈を紛らわせるかが重要になってくる。

この写真は「ダーツ」をやっている所である。雨が降り、霧が出ているので視界が悪い(的が遠いわけではない)。1つのチームの中に「作戦を考える人」と「投げる人」がいる。始めに「考える人」がルールについて議論し、その後に「投げる人」がダーツを投げる。なぜか議論で勝ったチームがダーツでも勝つ(心理戦である)。お金を賭けて楽しむ。

 

水対策

               

(左)暴風雨で屋根が飛ばないように固定している。   (右)乾季のための貯水タンク。

            

(左)雨どいを家の中まで引っ張って水道代わりに使用。

 (右)カサを売るおばあさん。雨が多いためだろうか、とても大きい。

 

ニックの感想

一体いつになったら雨は降り止むのだろうか。早く帰りたい、頭がおかしくなりそうだ。

           

霧で視界が悪い。           食器を雨ですすぐ。          「ハドゥドゥドゥ」 バングラデシュの国技

 


世界で一番乾燥した場所: チリ キヤグア

 

世界で一番乾燥している理由

東にアンデス山脈がある(雨雲が来ない)

南回帰線に近い(赤道付近で雨を降らした雲が暖かく乾いた状態で降りてくる)

(沿岸の町チュングンゴ)フンボルト海流が冷たい南極の水を運んでくる(霧はできても雲にはならない)

 

   

(左)アタカマ砂漠にできた人工の町「キヤグア」。今回の調査で「キヤグア」が年間降水量0.5ミリという記録を出し世界一となった(後に世界気象機関に認定される)。

     

(右)「アリカ」。世界一乾燥していると言われていた所。NASAが「地球上で火星の表面に一番似ているのはアリカである」として、ここを火星探査ロボットの実験場として使用した。

 

乾燥しているから起こること

乾燥しているということと砂が塩分を含んでいるということから、腐敗していない保存状態のいいミイラ(例えば、足の爪、髪の毛が残っている)が見つかる。2?3ヶ月で、どの遺体もミイラになる。

 

水を得る

写真:夜露を集める装置(アントファガスタでの軍事演習に同行)

穴を掘り、真ん中に缶を置く。上にプラスチックシートを敷き、缶のちょうど上にあたる部分に穴をあける。プラスチックシートについた夜露が穴を通って、下にある缶に集まる仕組み。

霧を集めるための装置(海辺の町チャングンゴ)

 

1家庭あたり1日15しか水を使えないという事態を改善するために考えだされた方法。沢山の霧の雫が集まることで、網の目に水が引っかかり、やがて下にあるパイプに集まる。濃い霧の日は1日あたり1つの網で17集まり、貴重な水源となっている。(海辺のため霧が発生。夜には湿度92%)

人工の川

アンデス山脈の水をパイプでふもとの町まで運ぶ。しかし、コストがかかる。

 

ニックの感想

人間が住むところには必ず水がある。

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考察

 4つの メExtremesモを見てきたが、どこの地域でも言えることは「自然と人間は密接に関係している」ということである。もっと正確に言うならば、「人間が自然に合わせて生きている」ということであろう。どの場所に住む人にも自然に逆らおうとする雰囲気はなく、むしろそれと上手く付き合っていこうとする姿勢が見てとれた。食生活、ゲームなどの文化はそれを端的に表していたように思われる。これらの地域よりも、はるかに快適な気候の中であるのに「暑い」「寒い」と言い、いつもエアコンで快適な温度を作り出して生きていることに少し疑問を感じた。

 ニックは「人間の住むところには必ず水がある」と述べている。これは裏を返せば「水のないところには人間は住めない」ということである。事実、旅をした4つの場所は固体・液体・気体と形は違うものの水が存在していた。ある場所では余るほど水があるのに、ある場所ではほとんど無いという違いには驚いた。同じ惑星でありながら水の配分はなぜ平等ではないのだろうか。しかし、平等でないことが地球に色々な顔を持たせているのは事実だと思う。平等でないことには、「水の性質」が大きく関わっているのかもしれない。

基準とは何だろうか。日本という狭い世界しか知らなかったら、そこで「普通である」ことが、そのまま自分の判断のもとになってしまう。いろいろな世界を見て、いろいろな「普通」があることを理解していきたいと思う。