シャングリラ~聖なる山の理想郷~
始めに
シャングリラとは英国の作家ヒルトンが小説「失われた地平線」(1933年刊)にて描いた理想郷の名である。このVTR「シャングリラ~聖なる山の理想郷~」では、山に住む人々の水と密接な暮らしを「理想郷」として紹介している。
1.白水台
最初に紹介されるのは香格里拉の白水台。山全体が石灰岩でできているため、水には大量のカルシウムが含まれている。それが徐々に堆積していき、扇形の白い板を階段状に並べたような、幻想的で美しい地形を形成している。
ここにはナシ族が住んでおり、もともと畑の作り方を知らなかった彼らは白水台の形を参考にして段々畑や田んぼを作り出した。それゆえ彼らは白水台を仙人が授けてくれた「仙人遺田」と呼んで敬い、その感謝の歌は今でも受け継がれている。
2.ヒマラヤでの生活
次に紹介されるのはヒマラヤに住む人々の暮らしである。ヒマラヤには北半球で最も南に位置する氷河があり、そこで暮らす人々に水を供給している。
彼らの生活は主に酪農で成り立っており、新鮮な乳と氷河からの水で作るバターは彼らの重要な収入源である。
3.チベット族の巡礼
チベット族を紹介するにあたって欠かせないのが巡礼である。彼らは収穫の時期が終わると梅里雪山に巡礼に出かけ、五日から二週間かけてお経を唱えながら歩き続ける。
この巡礼において最も重要な場所が標高3650メートルの地点にある滝である。この滝は「神の滝」と崇められ、聖地とされている。彼らはこの下を時計回りに3週歩き、滝に打たれることで、神の加護が得られると信じている。
4.梅里雪山の魅力
チベット族の巡礼の地として崇められている梅里雪山だが、他の季節にはまた違った表情を見せる。秋の夕暮れ時は夕日によって赤く染まった景色を見ようと、観光客が多く訪れる。また、湖に写った「逆さの梅里雪山」の姿を写真に収めようとする写真家も紹介され、梅里雪山は人々を魅了して止まない。
5.感想
このVTRで紹介されている人々の生活は、どれも雄大な自然や水と密接に関わっている。白水台の神秘的な地形はまさに水流の賜であるし、ヒマラヤでは氷河がなければ家畜も人も住むことはできない。梅里雪山の滝は「神の滝」と名付けられたように、チベット族によって大切にされているし、写真家の話にしても、この山の魅力は水と共にあると言える。
「理想郷」であるシャングリラは実際には存在しない架空の土地である。しかしこれらの山々では、今でもそれに極めて近い、穏やかな暮らしが続いている。そしてその傍らには、常に水が存在している。聖なる土地と豊かな水、そこでの生活こそが、人々が求める「理想郷」なのではないか。