「異常気象ミステリー ~今地球は病んでいる~」
地球は氷河期に向かって寒冷化していく時期であるはずだが、過去1000年少しずつ下がっていた地球の温度がここ百年あまりの間に急激に上昇へと転じた。DVDの冒頭でこのことを聞いたとき、温暖化が地球の気象の周期までを狂わせているのだと強く感じた。この影響で大気の乱れが生じ、海水温の上昇を引き起こして地球の気象現象を大きく左右している。水の少ない地域ではますます水が不足し、水の多い地域ではさらに水が増えて洪水ですべてを流してしまう。このような両極端に分かれる異常気象の現象は自然災害となってあらわれ、人間生活や自然環境、生態系を破壊している。
アフリカのチャド共和国では日本の四国より大きく世界3位の広さを誇るチャド湖が年々縮小していることが紹介されていた。10年で数十キロもの水面が陸地になっていき、地図の改定も追いつかないとのことだ。水がなくなり、大量の砂が風に運ばれて積もると、家までもが完全に土の下へ消えてゆく。このスピードは現地で実際に体感しなければ想像しにくいが、かなり半端ないスピードだと思う。東京湾の入り口である浦賀水道であれば数年で陸続きになり船が通れなくなってしまうほどの計算になる。水のあるところは昔から人が生活の生計を立てるもっとも身近な場所であった。チャド湖はとくに現在発見されている最も古い猿人が住んでいた地域でもあり、人間生活と関わってきた年月も長いだろう。しかし温暖化の影響で、湖での漁で生計を立ててきた人々の生活が失われていっている。
この地域では雨季と乾季とで湖の水位が大きく変化し、乾季には広大な陸地が姿を現す。これも水の驚異であり、このことは大昔からあったことだと思う。しかし雨季になると戻ってくる湖がだんだんと小さくなることは水の驚異には含まれていないはずだ。明らかに蒸発する水の方が降水量を上回っていることを物語っている。その差が元の場所に戻らず別の地域の降水量を増やしているという異常な現象は皮肉である。村から湖がどんどん遠くなっていくのを目の当たりにしている現地の人々はなにを思っているのだろうか。とくに彼らは地球温暖化とは無縁の生活スタイルなだけに、先進国で温室効果ガスを排出しながら快適な生活をしている私たちが他の国の人たちの生活を奪っていると思うと心が痛む。
汚されていた。しかしチャド湖のほとりに住む人々にはその水しか手に入らない。その水で生活しなければならないため、衛生状態は悪く村の人のインタビューの中でも1年に15人の子供が死亡していると話していた。カイ村もあと数年後には水が完全になくなってゴーストタウンとなり人々はさらに湖に近いところへ移動しなければならなくなるだろう。このままチャド湖が縮小していくとそのような人々がみな水を求めて同じ場所へ集中していくと思う。その結果さらに水や魚が不足し、争いに発展しかねない。それもチャド湖が干上がる時間の問題であり、そう先の話ではなさそうである。
チャド湖が干上がって水不足が深刻化している一方で、バングラデッシュでは水の被害が紹介されていた。年々激しくなる集中豪雨とガンジス川の洪水の被害で人々は生活の地を追われていた。土地はどんどん浸水し、住める場所を失った人たちは中州に移っていたが、それこそ一番先に増水した川の被害にあう場所である。しかし彼らにはそこしか陸が残されていないくらい、水は陸を覆っているのだと感じた。DVDで紹介されていた一家の父親が以前住んでいたという土地も映像を見る限り浸水したままだった。人は水がなければ生きていけないというが、やはり水が多すぎても生きていけないのだ。
バングラデッシュではさらに井戸水がヒ素に汚染されて使えなくなっている現状もあるという。化学肥料などで汚染された農地の土壌が洪水で流され、地下水に染込んで飲み水を汚しているのだ。井戸は水が少なければ干上がるが、多くてもこのような影響が出てしまうのだと思った。飲料水を失った人々はどうしているのか、その先は紹介されていなかったが、水がなければ生活できないことから別の土地に移っているのだろうか。それとも遠くまで水を汲みに行っているのだろうか。しかし他の土地は他の人々がいる。チャド湖の場合と同様、限られた水を取り合う争いが心配される。
21世紀は水の戦争になるという予測を様々なところで聞いてきたが、今回のDVDを観てようやくその意味が分かった。夏場に水不足になることがあるものの、日本では基本的には水に困ることなく生活できる。そのため水はいつでもどこでも手に入るものとして認識していた。DVDの中では日本人が1日に使用する水の量は一人当たり250Lと紹介していた。2Lのペットボトルを毎日125本も消費しているのかと思うと、いかに私たちは水に恵まれているかが分かった。
世界の水問題は温暖化による異常気象が原因であるとするならば、この問題を解決することは果たしてできるのだろうか。なぜなら人間は気象を操ることは出来ないからである。ある場所の水が不足し、地球上のまったく違う場所で水が余っている。両方で人々は生活に苦しんでいるが、水を人口の手で移動させることはほぼ不可能である。つまりこの問題の唯一の解決策となるのが、気象現象を元に戻すことである。しかしこれにはまず温暖化を停めてさらに温暖化以前の状態にする必要がある。その上、いままでの温暖化の影響で異常気象はしばらくの間は起こり続けると思われるため、自然災害の被害を最小化するための対策も必要となってくる。
異常気象を元に戻すには非常に長い年月がかかる上に現状ではそのような方向に人間が即座に行動できる環境ではないため、この問題はほぼ解決不可能なのではないかと思う。持続可能な開発は以前から提唱されていて、技術もそのために動いている。しかし温暖化とその影響は思いのほか早いスピードで広がっていて、技術は追い付いていない。この先50年で地球の温度は今より5度上昇するといわれている。過去100年で0.5度上昇し、現在世界各地で起こっている影響を見る限り、50年後の世界は想像しただけでも絶句してしまう。異常気象は今以上に厳しくなり、水の分布はいっそう二極化が進むだろう。
もはや手遅れと言っても過言ではなさそうな水と気象の問題であるが、温暖化を防止することは今すぐにでも出来るはずである。例えば日本の国民が全員節水を心がけ水の消費を半分に抑えたからといって、チャド湖の水が増えたりはしない。しかし温室効果ガスの排出をなくせば、温暖化はとめられる。もちろん日本だけでなく世界中で同時にやらなければならないため、いまの状況では実現は遠いが、ひとりひとりの人間が真剣に水のことを考えられるようになれば、決して不可能ではないと考えている。21世紀が水の戦争とならないように、私たちは水についてもう一度考える時期にきてきるのであると思う。