『地球大異変 Strange Days On Planet Earth

第二回「水が危ない」

制作 ナショナルジオグラフィック(アメリカ 2004)

 

 

 現在、世界中の学者が水質汚染問題に取り組んでいる。この番組では、科学物質が水や水に住む生物に与える影響について調査する人々のドキュメンタリーである。

 

まず、ワイオミング州の市街地から遠く離れた沼で、ヒョウガエルの数が急速に減少している。蛙は億年も前から生きてきたのにもかかわらず、少なくとも20種類もが姿を消している。蛙は特に敏感な生き物であるのに、人間は興味を持たない。オスであるのに卵子を持つという、生殖機能に異常のあるカエルが見つかった。生物学者のヘイズはアメリカで大量に生産されるトウモロコシ畑の除草薬、アトラジンがその原因であると考え調査したところ、1リットルにたった1マイクログラムのアトラジンが混ざっているだけでカエルの男性ホルモンを女性ホルモンに変えてしまうことがわかった。また、アトラジンが少ないほうが多い場合よりも異常がおきやすく、従来の薬品が多ければ以上がおきやすいという考えにも疑問を投げかけた。

 

カナダのセントローレンス川では、白い鯨ベルーガを20年にわたり調査している学者達がいる。ベルーガは発ガン率が上がり、ここのベルーガから大量の汚染物質検出されている。廃棄物並みの汚染物質が検出されたこともある。学者たちは化学物質のカクテル、つまりさまざまな種類の化学物質が混ざり合うことが原因ではないかと調査している。今までは物質ひとつひとつの効き目や毒性が調べられてきた。しかし、普通の物質でも混ざれば危険になる可能性があるのだ。

 

もちろん、人間にも影響はある。高濃度の塩素を含んだ水を飲んだ女性に流産が多いことが発見された。また、各種取り込まれた農薬を含んだ男性に精子の減少が激しいことも調査によりわかった。薬品ひとつよりもカクテルのほうが危険で影響が高いことも証明された。農薬の多いコロンビアで全員共通に使うのは水道水だが、浄水所では農薬除去の作業していないので、大量に含んでいる可能性が高い。まず農薬が勧誘するのを防ぐことが大切である。

 

オーストラリアのグレートバリアリーフでは、さんご礁を食べ破壊するオニヒトデの大量発生が起きている。この原因としては、サトウキビ畑の化学肥料や堆肥に含まれる窒素という説が有力である。窒素が肥料の役割をして、オニヒトデの幼生がたべる藻を繁殖させている。海洋生物学者が大規模リサーチをしたとこる、窒素が広がっている範囲とオニヒトデの発生範囲が一致した。陸から流れ込んだものが影響を与えているのは明らかだ。陸上の動植物の管理がさんご礁の状態と密接に結びついている。

 

ヴィンスヴィタレは代々サトウキビ農家を営んできたが、その農薬が土にしみこみ、川に流れ、すぐに海に流れ込んでいる。もちろん意図していたわけではなく、ほかのやり方を知らなかったのだ。彼は土から肥料が流れ出すのを防ぐために、川岸のサトウキビ畑を掘り起こし、木を植え始めた。

化学物質が海に行くまでに薄まると考える人もいるが、海に住むシャチ、さめ、黒マグロ、からも汚染物質は検出されている。これらの生き物は陸から遠く離れた場所に生息すると考えられてきたが。しかし、新しい探査装置のタグを対象につけることで、岸や汚染物質の流れ出てくる川のすぐ近くで過ごしていることが分かった。

 

海全体をきれいにするのは困難であるけれども、生き物の住んでいる場所が分かればそこを重点的にきれいにする取り組みが始められる。

 

 

 

正直に言ってしまえば、魚類や両生類が嫌いな私には始めのカエルの例は見ているのがとても辛かった。しかし、気持ちが悪いからだとか、そんな安直な見方をしてはいけない内容だった。1リットル当たり1ミリグラムの1/1万の薬品が溶け込んでいただけで雌雄同体になってしまうということは、それだけ生き物の体は敏感であり、また人間の作り出す物質は恐ろしい力を持っているということになる。今、さまざまな技術が進歩しそれに負けないようにと新たな技術が絶え間なく増加している時代の中で、果たして私たちの生活は、そして私たち自身はその進歩についていけているのだろうか。答えはもちろん、NOになるだろう。そして、私たちがその進化を心から望んでいるかといえば、これもNOであると言える。新しい機器が発売されて、それを購入した人の中に、その商品を知り尽くしている人が何人いるだろうか。その機器にはどのような操作を施せば、どのようなことが起こり、どれだけの危険があることを理解している人が何人いるだろうか。これを考えると、便利で格好のよい一点だけを見て技術への依存を続けていることがわかる。また、人型ロボットの開発が進んでいるが、ロボットが人間の作業すべてを行える時代が来たときに、本当にすべてを機会に預けてしまう人が現れるとは思えない。人間は一時的な進歩には驚き魅了されながらも、自らが動き働くことに喜びを得ているはずである。

つまり、私たち自身、進歩だけが大切ではないこと、進歩の先に起こりうることに気がついている。たくさんの作物を生産するための肥料でも多種の化学物質を混ぜ合わせて作り出した肥料はどこかで何かに影響することもわかっているはずだ。それでも、金銭という一時的な目的や名声のためにそれを無視してしまう。聖書の時代から人生には一時的な誘惑がつきものなので、そういった意味では人間らしいともとれるが、いくつもの命や長くから続いてきた生態系を傷つけていると思えば、許されるべき考えではない。それをこの番組で取り上げられた学者達は差先に立って研究し、敬称を鳴らしている。自分でやってしまったことにいち早く気づき、自分に出来得る限りのローカルな取り組みをすることが、第一に求められる。

 

これまで個々の特性しか調べられず、混ざり合ったときの危険性が見落とされてきたというのは、先にも述べたようにこれも重い問題だ。私たちはいつでも者の一面しか見ようとしない。他にも見方があることにも気づかないことが多い。2つの物質のよい効き目をもってすればよい効果が現れるという発見を賞賛し、後片付けをしなかったために動物や人体への影響が大きくなるまで気がつかないという失態はもはや数え切れないのだ。これは科学や技術だけの問題ではなく、たとえば外交等にもぴったり当てはまる。国同士が悪いところばかり取り上げ、互いの溝を深くしていくばかりの社会はいつか全体が大きく崩れてしまうだろう。科学技術においても効果と影響を見比べなければ同じようにどこかで汚染や破壊が起き、現在よりも悪化するに違いない。

私たちに今出来るのは、起きていることを知り、それに対する個々の対処を重点的に行うことだけかもしれない。それを、この番組は強く私に訴えてきたのだ。