貴重な水
まず私は高校生に対して、今起こっている地球上での問題を知ってもらった上で、日常生活について考えてもらい、そこから水の貴重さを感じてもらうということを目的としたいと思う。また水はこの地球上のどこにでもある最もありふれた物質であるという考えが実はそうではないということ、今起こっている水問題について、次のように話したいと思う。
「水はどこにでもある最もありふれた物質である。」このように考える、または思う人はどれくらいいますか?では果たして本当にそうなのでしょうか?今日は、水という物質は限りある貴重なものだということについて話したいと思います。
皆さんは毎日顔を洗ったり歯をみがいたり、トイレやお風呂を使いますよね?そう、人間は毎日が始まって終わるまでなんらかのかたちで水を利用しているのです。人間が今ここに生きていられるのは限りある水のおかげなのです。このように言うと、やっぱりどこにでもあるから自分たちが使っていられるんじゃないかと思うかもしれませんね。それは、水に恵まれた日本の中にいるとそう思えてしまうのかもしれません。しかし、世界では新聞やテレビで報道されているように、さまざまなところで水に関する問題が発生しているのです。この機会を通して、水の貴重さ、そして偉大さについて考えてみましょう。
地球は水の惑星と言われるけれど、水資源は私たち人類が使える範囲が限られているもので、21世紀は水危機の時代とまで言われています。この矛盾した問題はなぜ起こるのでしょうか?これは地球上の水のタイプに関係しています。地球にある水の97%は海水で、残り3%が淡水です。その3%の大半は南極や北極、氷河の氷として存在し、氷以外の水の多くも水蒸気や雲のように大気中に存在するものなのです。そう、川、湖、降雨などの人類が使える水というものは地球上のほんの0.01%に過ぎないのです。ここからわかるように、わずかな水しか人類には与えられていません。
そして私たち人間はこのほんの少しの水に頼らないと生きていけません。人間の身体の70%が水で成り立っているのは知っていますよね?この時点で人間と水は関わりがあることは明らかですが、加えていうと、人間には水との関係が重要になってくるのです。身体の水分が少なくなるとどうなるか知っていますか?この身体の70%のうち、2%を失うとのどが渇き、5%を失うと幻覚をみる、そして12%で死にいたるのです。たったの12%で!?と感じるかもしれませんが、それほど水は人間にとって必要不可欠な物質だということです。私たちが利用できる水はとても少ないことからわかるように、使用できる水はとても貴重なものであり、無限にある物質ではないのです。そして、身体にとっても水は貴重な存在なのです。
では近年水に関してどのような問題が起きているのでしょうか。何か新聞やニュースなどで見たこと、聞いたことがある人はいますか?問題として一体何が挙げられると思いますか?先ほど21世紀は水危機の時代だといいましたが、それは今問題となっている水不足の恐れからきています。
その水不足が深刻化する一つの原因として人口の増加が挙げられます。今や60億人を突破した世界人口は、2025年には80億人に達すると予想されていて、国連の予測では、世界の水使用量は2025年には利用可能な水量のほぼ9割に達し、世界各地で水不足の問題が発生する可能性があるとされています。そして、水が原因となって年間500万人から1000万人が死亡、12億人が安全な飲料水を確保できなく、2025年には48カ国で水が不足すると推測しています。これだけでは、この状況を想像することは難しいと思うので、少し例を出してみましょう。
実際に河川付近では、水紛争とも思えるような問題が起きています。皆さんも知っている有名なあのナイル川やガンジス川で起きているのです。世界最長の河川であるナイル川では、エジプトだけでなく10カ国ほどの人々、約3億人が利用しているため、貧困や内戦、急激な人口増加などで、水需要と供給のバランスが崩れることが予想されています。また、ネパール、インド、バングラデシュをまたがっているガンジス川も人口増加から、最下流国であるバングラデシュでは乾期の水量不足が著しいのです。そしてインドとバングラデシュの水資源の配分は最大の政治的課題の一つになっています。このようにあんなに大きな川でも水が不足するという恐れをもっているのです。
ここまでで人口の増加によって人類が利用できる水が不足するということはわかりましたね?でも、ここでもまだ自分の身近に起きている問題ではないと思う人も多いと思います。では、人口が増加して単に水の使用量が増えるだけではなく、他にどういったものが水不足の原因として挙げられるのでしょう?これは人類すべてに影響するとても深刻な問題であり、現代の課題となるものですが、なにかわかりますか?そう、答えは環境問題です。ここからは環境問題の一つである地球温暖化によってどのように水、私たち人間と関わってくるのか話したいと思います。地球温暖化によって起きることとして、降雨に変化があらわれ、多雨地方ではさらに多く降り、乾燥地帯では更に少なくなってしまう恐れがあります。これによって洪水が起きる一方で水不足による砂漠化が進むという悪影響が及ぼされるのです。
つまり、北極では氷が融けて水量が増え、水災害が多発する一方で、アフリカやオーストラリアのような乾いた温暖な地域ではより気温が上昇するため、水分が蒸発し水の量が減少することで干ばつしてしまいます。現在では、20世紀の間に地球の平均気温は約0.6℃上昇し、海面は10~20cm上昇しています。日本の平均気温は、20世紀の100年間で約1.0℃上昇しているのです。2100年までには、さらに地球全体の気温は1.4~5.8℃上昇、海面は9~88cm上昇すると予測されています。この温暖化による異常気象として、例えば2000年には、インドで大洪水が起き、450万人が家を失い、400人以上が死亡しています。さらにこの洪水のために穀物の不作が起きました。一方でケニヤやエチオピアでは、干ばつや森林火災が襲い、穀物が不作になり、800万人の人が飢餓の恐怖にさらされています。こういった水の影響によって水不足ばかりではなく、食べ物も不足してしまうのが現状です。地球温暖化は今まで保たれてきた水のバランスを悪化させてしまい、水が豊富な地域と水不足の地域の差をますますひらくことになります。気温は確実に上がっていて、このまま行くと水資源の危機による大きな水紛争が起きる可能性から逃げ切れません。
このようなエジプトやインドなど世界各地で起きている水資源の危機は、日本には関係ないと言えるような問題ではありません。実際、西日本の一部地域では渇水に見舞われることがあり危機に直面しています。また日本は農産物や繊維製品の世界有数の輸入国で、木材に関しては日本だけで全体の半分以上の輸入をしているのです。日本はこれらの生産に必要な水を間接的に大量消費しているのです。農産物においても小麦や大麦、豆類の9割以上、果物の約半分を輸入していて、この
輸入農作物を生産するのにも毎年およそ52億Gの水を消費している、つまりこれは約3000万人分の生活用水にあたるほどの莫大な量なのです。環境問題により水不足が悪化することで、輸入に頼っている日本にとっても重要な問題となります。
そして、ここで食い止めるための手段は皆さんの日常生活の中にあります。皆さんが普段使っている生活用水については、当然必要だと思って使っていると思いますが、そこからまだまだ節約することができるのです。家庭ではだいたいトイレ、入浴、炊事、洗濯の主に4つの部分で水は使われていますが、それぞれ節水できる部分が多々あるのです。トイレならば、二重流しをやめたり、大小のレバーを使い分けるだけでいいのです。ちなみに小レバーは大レバーに比べて2リットルも少なくすみます。シャワーでは1分間に約12リットルの水を使っています。15分も出しっぱなしにしていれば、お風呂1杯分に相当するのです。食器を洗うときには流しっぱなしにすると平均110リットルほどの水を使いますが、ため洗いにするだけで約20リットルの使用で済み、これは5分の4ほどの節約になるのです。歯を磨くときもコップを使うだけで3杯程度、約0.6リットルで、流しっぱなしに比べると約5リットルも節約できます。今説明した例はほんの一部に過ぎなく、少し生活を見直すだけでまだまだ出来ることがたくさんあるのです。今までにもこういった話を聞いたことがあっても、その時だけ納得して実行になかなかうつせなかった人もいると思います。でも水資源の危機といわれるこの時代、実行しなければ何も始まらないのです。
今日の問いであった水は最もあふれている物質なのかということについて、もうわかってもらえたと思います。そう、答えはノーですね。むしろ水は貴重な物質なのです。今からでも遅くないのですから、少しでもわかってもらえたのなら、皆さん今までの生活を見つめ直し、水を節約し大切に使ってください。水資源のバランスを崩す地球温暖化のような環境問題をこれ以上悪化させないためにも、一人ひとりの意識が大切です。私たち人間が意識をもってそれぞれ行動することで水を、そしてこの地球を守っていきましょう!!
参考文献:
ウォーターネットワーク 水と社会 http://www.waternetwork.org/society/
Kanto
River Scope. 渇水はなぜ起こるか
http://www.ktr.mlit.go.jp/kyoku/river/kassui/kassui7.htm
特集しのび寄る水資源危機 日経サイエンス 2001年5月号
JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター
http://www.jccca.org/find/ondanka/pamph/page2.html
http://www.jccca.org/find/ondanka/pamph/page7.html
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