気候大異変
_地球シュミレータの警告_
地球の温暖化によりこれからの将来、地球の気候が激変し、異常気象が脅威を振るうと予測されている。2月19日に放送されたNHKスペシャル番組によると、地球シュミレーターという未来の異常気象を予測するスーパーコンピューターにより、100年間の気候を予測できるようになった。地球シュミレーターは、海洋研究開発機構にある国家プロジェクトとして開発されたものであり、5120台ものコンピューターがつながれている。トップクラスの計算能力をもっているのである。このシュミレーターは空の細かい動きも表せることにより仮想地球を作り出し、気圧の動きを再現できるのだ。この最新技術を用いて、地球は本当に温暖化するのか。温暖化により、人々はどんな危機に直面するのかという疑問が問いかけられている。
赤道から3000キロメートルも南へ離れたブラジル沖において、ハリケーン級の熱帯低気圧が発達し、4万棟が全壊か半壊してしまった。死者又は行方不明者は11人、負傷者は500人以上にも上った。誰もが予測していなかった自然災害であった。しかし、1年前仮想地球を作りだす、地球シュミレーターは、ブラジル付近に発生するはずのない低気圧を予測していたのだ。NASAのゴタド宇宙飛行センターでもこれは予測され、「Rare South Atlantic Tropical Cyclone」が発表されていたのである。このことにより、シュミレーターが気候を予測できる能力をもっていることが証明されたのである。
シュミレーターが計算の基準として使用している数値は大気中の二酸化炭素の数値である。産業革命以降、地球の二酸化炭素の量は上昇しており、それに伴い気温も上昇している。このまま化石燃料に依存し、使用し続ければ、100年後には今の2.6倍の960ppmにまで大気中の二酸化炭素の量は達する。京都議定書に即し、5%の削減を先進国全体で行えば、860ppmになる。また、今の経済成長を進めてもエネルギーを効率的に使えば700ppmにとどめられる。今回地球シュミレーターの計算の前提で使われた数値は、二酸化炭素を700ppmとしたものである。
100年後の気温は4.2℃も上昇し、東京の1月は紅葉の見所となる。そして桜の満開となる春には、初夏を迎える。言わば、夏の期間が2ヶ月も長くなるということであり、冬らしい冬はなくなってしまう。30℃を超える真夏日は100日を超える。そして熱波により人々の命は奪われてしまうという予測がされているのである。
2003年にパリでは熱波の先立てが起こったと言われている。24℃までしかあがらないと思われていたのに、この年の夏は最高気温が35℃まで上昇し、猛暑に襲われたのである。異常な気温の上昇により、老人は弱まり、多くの人々が脱水症状に陥ってしまった。病院はパンク状態になり、1万5千人の死者がでてしまった。また、ヨーロッパ全体では3万人が熱波により亡くなった。熱波の危険性はこれから世界中で高まることが地球シュミレーターにより明らかになった。ニューヨークなど最低気温と最高気温の変化が激しい地域では対応が不可欠となってくる。アメリカでは「熱波警報」がメディアを通じて出されている。今現在では、熱波が起こりえない地域でも、将来では起こる可能性が高いのだ。
番組では最初にハリケーンカトリーナを取り上げ、自然災害のすさまじさを物語っていた。2005年8月にアメリカニューオーリンズなどを襲った、アメリカ至上、最大且つ最悪の被害をもたらしたハリケーンである。カトリーナは熱帯低気圧の巨大化したものであり、大陸付近の海面の水位の変化はすさまじかった。高潮は暴風雨の津波と言われるほどである。アメリカの海洋大気局により、その雲の中で観測飛行が行われ、カトリーナの開けた目も映像でみることができた。風速82メートルに達し、雲は18キロメートルの厚みだった。中心の気圧は902ヘクトパスカルだった。このハリケーンによる死者は1400人以上にも達し、被害総額は15兆円であった。
地球は大気の層に覆われており、温暖化により大気の循環が乱れてしまう。100年後の6月、日本の梅雨明けが遅れることをシュミレーターは示していた。気圧配置が固定化し、バイオ前線がなかなかなくならないためである。九州では降水量が大幅に増え、東北では激減する傾向も見られた。中国においても、南部では現在洪水が頻発しており、逆に草原であった北部が乾燥し砂漠化が起こっている。気候が極端に変化することにより、豪雨の頻度も増えるのである。100年後、九州では今の70%も増加されることが予測され、東北では降水量が減少する傾向にあるのにもかかわらず、豪雨の頻度は増えるのである。別の言い方をすると、一回で降る雨の量が急激に増えるということを意味するのである。
ニューヨークではハリケーンにより被害予測報告書が提出された。この報告書は1938年のハリケーンを上回る脅威をもつハリケーンを想定して書かれたものである。海面は9メートル以上も高くなり、街は高潮に襲われる。地下鉄はすぐに水没してしまい、防災や避難体制をとる必要が不可欠であることが指摘された。
しかし、全ての国でニューヨークのような対策が取れるわけではないのが現実である。番組ではバングラデッシュが取り上げられ、1991年のサイクロンにより、14万人の人々が高潮により亡くなった。メディアもまだ普及されていなく、避難所である2階建てのCyclone Shelterも、実際村の20%の人しか逃げ込めないのである。これが途上国の現実であり、急速な援助が求められている。
これらの予測はエネルギーを効率的に使ったときの予測であるに過ぎない。もし二酸化炭素を制限できなければ、将来もっとすさまじい異常気象が起こることは明らかである。地球シュミレーターにより、異常気象の姿はある程度明らかになった。我々の子孫を守れるかは、私たちの行動にかかわっているとのメッセージがこめられていた。
この番組を通して、改めて自然災害の力は人間ではコントロールできないものだと感じた。また、異常気象をもたらす原因は我々人間にあるのだ。人間が少しずつではあるが地球を汚染している。自分で自分の首を占めているようなものである。防災に関して、日本は恵まれている国である。防波堤などの防災対策が充実しているし、避難経路やマップも作成されている。バングラデッシュを含む、数多くの途上国ではストリートチルドレンが存在しており、防災対策なんてこれっぽっちもされていない地域もあるのだと気付いた。日本やアメリカなどの先進国でさえ、自然災害により街はめちゃくちゃにされてしまう。もし途上国が同じような災害に襲われたら、被害はもっとひどいのではないだろうか。番組でのCG映像を通して、自然災害が起きたとき、人間がどれだけ無力かを思い知らされた。どんなにその国が発展してようと、してまいと、異常気象は地域を選ばない、そして容赦しないのである。気象の常識が覆される時代に突入しており、どんな異常気象が起こってもおかしくないのだ。人間の予想をはるかに超えた異常気象が誕生するなか、唯一それらの未来の気象を予測できるのが地球シュミレーターであるのだ。人間はこの最先端コンピューターである地球シュミレーターに頼っていくしかないのだろう。そして地球温暖化のスピードを抑えるために、エネルギーを効率的に使わなければならない。地球の異変は世界全体の問題である。各国がこの意識を持ち、二酸化炭素排出量の削減を行わなければ、私達の子孫の生活は今以上に脅かされるのだ。