ある交換留学生からの便り (2007)

Date: Thu, 13 Dec 2007 10:39:20 +0900 (JST)
Subject: ラブレター(?)というかお礼です
From: h07****@yamata.icu.ac.jp
To: ********@icu.ac.jp
森本あんり先生

突然のメール失礼いたします。転入本科学生で現在アメリカの G******** College に交換留学中の M R と申します。今年の春学期に先生の「キリスト教史II」を受講していました。

今日は、突然で失礼になってしまわないかとも思ったのですが、森本先生にお礼を申し上げたくてメールをさせていただきました。とても長くなってしまって申し訳ないのですが、お時間のある時にでもお読みいただければ幸いです。

こちらの留学生活も悪くはないのですが、最近どこか物足りなさを感じるのです。課題を一生懸命やっていても、あまりやりがいを感じない。どこか学校の空気に馴染めない。ここの学生はICUの学生とは違う。最近ずっとそんなことを感じていました。それは何故かということを考えたときに、やはりそれは大学が掲げる教育理念の差にあるのではないか、そしてそれと同時に、森本先生の授業が自分にとってまさに「知の揺さぶり」であったことを思い出したのです。

留学先の大学も決して悪い学校ではないですし、人種間の平等を重視するなど、様々な取り組みを行っています。ただ、それでもやはり、「学生をどのような人材に育てるか」というところで、いまいち明確なビジョンを持っていないように思われるのです。

ICUは入学式で学生が世界人権宣言に基づいて宣誓するなど(世界人権宣言が成功しなかったという指摘もあるにせよ、私にはそれが学生にとって非常に有意義なことと思われるのです)大学として「神と人に奉仕する」「恒久平和の確立に資する」人材を育成するという、かなり明確な教育理念を持っています。私はICUのそういうところがとても好きです。また、ICUの特色であるリベラルアーツ教育はサイードの言う「アマチュアリズム」に通じる部分もあると感じますし、現代の人類社会で求められているのはそのような教育のあり方なのではないかと私は思うのです。

理念は理念に過ぎないという指摘もあるかもしれませんが、これまでICUで教育を受けてきて、「君たちは人類社会の抱える問題にどう応えるか」「君たちは知性を与えられているのだから、その知性を生かして人類に貢献できるようなことをしなさい」というメッセージを様々な教授の授業から感じました。

前の大学には一年しか在籍していなかったため、他大学をよく知っているとは言えないのですが、ICUはかなり学生を尊重・信頼してくれる大学だと思います。たとえば、前にいた大学では、「君たちは素人だからエキスパートの私が教えてやる」という態度の教員が多かったように感じましたし、「なめとんのか」と感じる瞬間もいくつかありました。もっとひどい話になると、母が通っていたある大学の夜間部には、「お前らはバカだから卒業しても就職なんかありゃしねえんだよ」と授業中に言ってのける教員がいたそうです。そんなことを聞いて、「人類に貢献するような仕事をするんだ」と思う学生はおそらくいないでしょう。

教育の現場においては特に、教員が学生に「夢を見させる」ことはとても大切なことだと私は思うのです。そうした夢があるからこそ、この世界は少しずつでも変化して行くことができると思うのです。独立宣言をもとにアメリカが様々な breakthrough を経ていったように。森本先生の授業は、そうした夢を、そしてこの世界の豊富さを私に提示してくれました。 本当にありがとうございました。そういった意味で、ICUは本当に自分にとってかけがえのないユートピアでした。

なんだか手放しで絶賛してしまったようで少し恥ずかしい気もしますし、ICUが恋しくて熱が入ってしまっている部分もあるかもしれません。ただ、それでも、ICUに、そして私にとってICUで最も印象に残る授業をしてくださった森本先生に、お礼が言いたくてメールをさせていただきました。

長文にもかかわらず最後まで読んでいただいたことを感謝します。

M R


Subject: Re: ラブレター(?)というかお礼です
From: ********@icu.ac.jp
Date: Thu, 13 Dec 2007 11:18:55 +0900
To: h07****@yamata.icu.ac.jp
 M R さん

メールをありがとう。
あなたも書いているように、きっと半分はホームシックなのでしょう。

でも、そういうことを感じた時、
それを書いて読んでもらえる相手がいる、
と思えることがすばらしいと思うのです。
わたしがその読み手になったことを、とても嬉しく思います。

理想は、途中で現実にへこたれずに、持ち続けることが大事です。
「愚かな光の子」じゃなくて、「賢い光の子」になれ。

これからどんな道に進むにせよ、
あなたのような学生がICUから飛び立ってゆくことは、
わたしにとってとても誇らしいことです。
応援しています。

森本 あんり

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