国際基督教大学
GEN011 N1:物理の世界(A)-科学的な考え方
2014年11月20日
岡村秀樹先生
Group1 メンバー
151160 KANEKO Arisa
161351 OKABE Tomomi
171196 KIKUCHI Moeno
171376 OOKA Miki
171381 OTA Yusuke
171405 SASA Hiromi
171448 SUGIE Yuta
171578 YANO Satoshi
実験テーマ:「タンパク質分解酵素のはたらきと適正温度」
見出し
1)実験目的
2)原理(背景)
3)実験方法
4)実験結果
5)考察
6)結論
1)実験目的
プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)が血液汚れを落とすのに適切なのはどのくらいの温度なのかを調べる
大根に含まれるタンパク質分解酵素を利用し、布に付着した血液汚れを落とす。同様のタンパク質分解酵素を含んでいるパイナップルと、過酸化水素を利用している酸素系洗剤(ワイドハイターEX)との比較、また温度の違いの比較を行い、汚れの落ち方を検証する。
2)原理(背景)
●そもそも<酵素>とは?
生体内で起きている働きは、すべて化学反応によるものであるが、この生体内の化学反応は通常だと反応が完了するのに時間がかかる場合が多い
→そこで<酵素>はこの化学反応に対し触媒として働き、その反応速度を速める役割をもつ
●...触媒とは?
原則として化学反応は、低温であるほどその反応速度は遅くなり、高温であるほどその反応速度は速くなる。
→しかし、触媒と呼ばれる物質を加えることによって、温度を変化しなくてもその反応速度を高めることができる。触媒は化学反応を速める以外の働きはしない。
●酵素の温度の関係
酵素の大多数はそれ自体がタンパク質でできているが、タンパク質は熱に弱く、熱を加えることによって変性してしまう(例.ゆで卵)。酵素が熱で変性すると、その酵素としての性質が失われてしまい、失活してしまう。しかし上記の通り化学反応は低温では反応速度が低いため、低温でも酵素の働きは十分に引き出せない。
→高温過ぎても低温過ぎても上手く働かない=つまり酵素にも適正温度が存在する。
ヒトで考えると、その体温は内部で40℃ほどであるから、酵素の適正温度は40℃くらいであると推測できる。
※ちなみに酵素は分解できる物質が決まっているため、タンパク質分解酵素がそれ自身を分解してしまうことはない。
●血液汚れを落とすには...
血液はヘモグロビンと呼ばれるタンパク質を 含んでいる。通常ヒトがタンパク質を摂取すると、タンパク質はアミノ酸と呼ばれる物質が鎖状につながってできた巨大な分子であるため、タンパク質のままだ と分子が大きすぎて吸収できない。吸収するためにはより小さな分子に分解する必要がある。この分解する過程が消化である。
→この分解を速める触媒がプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)である。プロテアーゼは食品では大根、パイナップル、キウイ、パパイヤに、体内では胃液や膵液に含まれる。
★実験では、このプロテアーゼで血液中のヘモグロビンタンパク質を分解して汚れを落とす過程を調べる。
↑オーソモレキュラー.jp 「栄養素の説明―タンパク質」(http://www.orthomolecular.jp/nutrition/protein/)より引用
●過酸化水素水(ワイドハイターEX)について
比 較実験として利用する過酸化水素は、そのまま放置しても自発的に水と気体の酸素に分解される。この分解過程は、血液中にも含まれるカタラーゼという物質が 触媒として働き、その反応速度を速められる。この分解過程の間、過酸化水素はほかの物質を酸化する能力が高くなる。酸素系洗剤は、この過酸化水素が汚れを 酸化し変質させて、洗浄しているのだと思われる。
3)実験方法
①新鮮なサンマの血液を綿100%のタオルに付着させ、30分ほど放置。
②洗剤(ワイドハイターEX)、大根おろし、パイナップルについて
A.氷水で冷やして0℃くらいにしたもの
B.それぞれ常温(17~20℃)
C.人肌の温度(35~40℃
D.それ以上の高温のもの ※B,C,Dについては電子レンジで温めて温度を調整
の合計4種類の温度のものを用意。
③大根おろし、パイナップルは布に包み、また酸素系洗剤は布にしみこませ、3分間血痕にたたきつけ、1分ごとの血痕の色の変化をみる。
4)実験結果
【A.0℃】
実験前 | 1分後 |
2分後 | 3分後 |
【B.常温(17~20℃)】
実験前 | 1分後 |
2分後 | 3分後 |
【C.人肌(35~40℃)】
実験前 | 1分後 |
2分後 | 3分後 |
【D.それ以上】
実験前 | 1分後 |
2分後 | 3分後 |
5)考察
●プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)―大根おろし・パイン―の適正温度
B.常温とC.人肌でよく落ち、A.0℃やD.それ以上の温度であまり落ちないことから、温度が低すぎると酵素が働きにくく、また温度が高すぎると酵素が変性してしまうことが考えられる。
●過酸化水素水と温度の関係
酸 素性洗剤は過酸化水素でできている(=タンパク質ではない)ので、温度によって変性することなく、高温であればあるほど分解速度が速い(=よく落ちる)と 予測された。しかし、結果はどの温度においても酸素系洗剤の洗浄力にはあまり変化が見られなかった。その原因としては、電子レンジで温めた時点で多量の泡 が発生していたことから、カタラーゼと反応させる前にその分解が起きてしまい、布につける時点ではすでにほとんどが分解され、汚れを酸化させるに至らな かったのだと考えられる。
全体的に酸素系洗剤よりもタンパク質分解酵素を利用しているほうが汚れの落ちが格段に良かった。物質を酸化させるよりも、分解したほうがより強力で確実な方法なのだと考えられる。
6)結論
酵素によって血液汚れを落とすことは可能である。また、市販の酸素系洗剤よりも、タンパク質分解酵素を利用したほうが汚れをより落とすことができる。しかし酵素は、その働きを生かすのに適正な温度が存在するので、その範囲内で実践しなければならない。
終わり