吉野 輝雄
ここにおもしろい計算問題がある。計算を真面目に行いその結果に向かい合うと,その人の視野を全地球,人類全体にまで広げる力を発揮する。その問題の名を「地球カレンダー」という。
問題:「地球は今から45億年前に誕生したと言われている。この気の遠くなるような年数は実感しにくい。そこで地球の誕生を元旦の0時とし45億年を一年365日に例える。すると,次の出来事は何月何日の何時になるか計算せよ。(a)地球上に植物・恐竜が出現した「4億年前」 (b)人類の先祖(ホモサピエンス)が現れた「50万年前」 (c)キリストが誕生した「2000年前」 (d)産業革命「200年前」。この計算問題を解いた後に「その答えを見て何を感じたか」をレポートせよ。」
私は,この問題を今まで800人以上の大学生に出し,その答案と感想をファイルとして残してある。彼らはまず一様に驚きの感想をもらす。次にその驚きが,日常の仕事(勉強)や人間関係に縛られていた心を解き放ち,全地球的視野、全人類的視野へと導くのである。驚きの理由は答えそのものにある。
答え:(a)11月29日(b)12月31日23時(c)同日23時59分46秒(d)同日23時59分59秒。
ここで共通の驚きは,地球の歴史に比べて人類の歴史があまりに短い事と人間の業である科学・科学技術の急速な発展ぶりにある。しかし,それをどう受けとめたかで感想はおおよそ三群に分かれる。(1)人間は瞬時の中に偉大な進歩を遂げた、すぱらしいという感動・楽観派。(2)人間は短期間に地球を支配し,自然環境を汚染してしまった。果たして人類に未来があるのか,科学の進歩とは何かという批判・悲観派。(3)人間(自分)の一生ははかないものだと言う人生無常論派。皆さんは何を感じますか?
この問題はかつて朝日新聞紙上に載ったもの(上図)で、私も答えに驚きいろいろな事を考えさせられた。太古の時代に動植物からできた石炭.石油を数秒の中に使い果てたそうとしている人間の業は,神を恐れぬことではないか。地球は人間だけのものではないはずだ。すべての生物は共存すべく造られ地球の歴史の中で淘汰されて来た。神に造られた人間は、神を畏れることこそ知識と道具という力を持ち地球に大きな影響力を持つに至った人間の責任ではないか。それが、かけがえのない生命の惑星を滅びに陥らぬための第一の務めであると信じる。
「神を恐れることは,知識(科学・科学技術)のはじめである」(聖書・箴言1:7)