「水」の不思議さと偉大さ

関 真衣

 

選択課題1「水は無味、無臭、透明で、科学的に物理的にも何の特徴もない、世界で最もありふれた物質である」と考えている高校生に対して、講義を行う。

「水」の不思議さと偉大さ

 はじめまして。今日は皆さんに水についてお話しようと思います。水は私たちの生活と切っても切れない、重要な存在ですね。しかし、あまりに身近すぎて水について考えることなんてそうないと思います。皆さんの中で、「水は無味無臭の透明な液体で、何の特徴もないありふれた物質だ」と考えている人はどのくらいいるでしょうか。手を挙げてみてください。(ちらほら手が挙がる)それでは、今挙手しなかった人で、水の特異な性質について説明してくださいと言われて、すぐ説明できる人はどれくらいいるでしょうか。急にそんなこと言われても困りますよね。もし、説明できるという人がいると私も講義をする必要がなくて困っちゃうんですが。

 

1. 水は本当に無味無臭だろうか?

まず、水の味、匂いについて話したいと思います。とはいっても、普通の講義ではつまらないので、実際に水に味や匂いはないのか確かめながら、講義を進めようと思います。さあ、こちらへどうぞ。ここに用意した3つの水を試飲して、比較してみてください。毒なんて入ってないので、安心して飲んでくださいね。何か違いに気づいた人はいますか。

まず1番右に置いてある水はどうでしょう。そうですね、これは普通の水道水ですね。少々カルキくさいですが、一般的な水道水です。それでは、真ん中の水はどうでしょうか。匂いはどうでしょう。匂いはないですね。味もさっきの水道水と比べて甘く、優しい感じがしませんか。

これはどこの水でしょうか?ミネラルウォーター?いえ、違います。どこかの湧き水?いえ、残念ながら湧き水でもありません。実は、この水は私の実家から持ってきた水なのです。私の家では昔からある井戸水と水道水を引いているのですが、これはその井戸水です。私にとって小さい頃から親しんだ水です。日本のなかでも地域によって、水はそれぞれであることがわかると思います。さて、左端の水はどうでしょう。匂いはなく、味は先ほどの2つと比べて、すっきりしていると思いませんか。

この水は、『コントレックス』というフランスのミネラルウォーターです。硬水といわれる、ミネラル分を多く含む水です。日本で採取されるミネラルウォーターは軟水が主で、硬水はほとんど海外から輸入されたものです。

この3つを比較してみると、水は無味無臭ではないということがよく分かったと思います。味の違いは、含まれているミネラル分が関係していて、あまりに、ミネラル分が多くなると「渋味」「苦味」を感じたりします。また、軟水でも水道水と地下水で大きな味、匂いの違いがありましたね。実は、水道法によって水道水は蛇口において0.1mg/l以上の残留塩素濃度を保持していなくてはいけないのです。細菌の繁殖や水の汚染を防ぐために、塩素を投入しているのですが、もともとの水がきれいで、衛生上問題が無ければ塩素の量だって減らせると考えられないでしょうか。

 

2. 水は何の特徴も持っていない?

 次に、あまり知られていない水の特徴について3つ話したいと思います。夏の暑い日、のどが渇いたあなたはグラスに氷を入れ、水を注ぎ、飲みました。実はこの中にも、水の特異な性質の1つが見られるのです。何か気づいたでしょうか。それは、氷が水に浮いているということです。そんなの当たり前だと思うかもしれませんが、この、氷が浮いているという現象は珍しいものなんですよ。普通、他の物質は固体になるほど密度が大きくなり、液体には浮かない場合がほとんどです。しかし、水は4℃で密度が最大になった後は、段々密度が小さくなっていくという性質を持ち、氷は液体の水より密度が小さくなってしまいます。だから、氷が水に浮くのです。この性質によって、冬季でも湖は表面が氷に覆われても、水底は凍らず、様々な生き物が死滅せずに春を迎えることができるのです。もし、氷が他の物質のように、水に浮かずに沈んでしまったら、どうなるでしょうか?湖は完全凍結してしまい、釣りができなくなります。今言ったことは冗談ですが、たとえば南極や北極の氷はすべて沈んでしまい、海水面が上昇して、陸地が海の底になってしまっていたでしょう。つまり、現在の豊かな生態系は存在しなかったということです。

 2つ目の水の特異な性質は、温まりにくく、冷めにくいという性質です。水の比熱は1cal/gですが、空気の比熱は0.24cal/g、陸地(砂)の比熱は0.23cal/gです。比熱は、ある物質1gを1℃上昇させるために必要な熱量をあらわします。この数値からも、水は温まりにくいことが分かります。知っている人も多いかもしれませんが、人間の体のおよそ60%は水で占められています。もし、水が温まりやすく、冷めやすかったら私たちの体にはどんな影響があるでしょうか。実は、体温の変動が大きくなる可能性があります。水の比熱が大きいおかげで、私たちは一定の体温を保てているからです。血液をはじめとする体液は水でできているし、細胞だって水がないと構成されません。

 3つ目に、モノをよく溶かし込む性質が挙げられます。砂糖や食塩が水に溶けることはこれまでの経験上、私たちもよく知っている事実です。水は無機化合物183種類のうち、89種類を溶かすことができます。アルコールは183種類のうち、40種類しか溶かせないことを見ると、水がよくモノを溶かすことがわかります。この性質は、半導体産業でも用いられているんですよ。皆さんは「超純水」って聞いたことがありますか?水に含まれる不純物や酸素を極限までとりのぞいた、限りなくH2Oのみでできた水なのですが、これは半導体産業での洗浄水としてや医薬品の製造時に使用されます。飲んでみると、おいしいものではないそうですが少量なら人体に問題はないそうです。

 このように、水は意外な性質を持っており、知らないところで私たちの生活と関わっているんですね。まだまだ、水は面白い性質を持っていますが、今日はひとまずここまでで。最後に水は本当にありふれた物質なのかということについて説明しようと思います。

 

3. 水はありふれているものなのか?

 日ごろから、蛇口をひねれば簡単に水は手に入るし、日本は梅雨や台風という自然現象によって水が豊富にあると考えがちではないでしょうか。確かに、日本の1971年から2000年の平均降水量は1718mmで、世界平均の880mmを上回っています。しかし、日本の水消費量も劣らず、多いのです。1日の国内での水使用量は290000(100万l)にも上ります。これはほかの先進国の中でも、多いほうです。その一方、安全な飲料水を手に入れられない国や地域は世界にまだまだあります。水そのものが地域によって偏在していることは動かしがたい事実です。しかし、私たちの普段の行動を少し変えることで、水の消費量を減らすことができるはずです。例えば、買い物をしたとき、お店でビニール袋をもらわないことも水の消費を抑えるのです。意外じゃないでしょうか?実は、プラスチックなどの石油製品1kgを生産するときに、85000lもの水も使用されているのです。また、生活用水の内訳を見ると、お風呂とトイレで使用される水が全体の51%を占めています。この部分を節水すると高い効果が期待できそうですね。

 どんな節水方法があるでしょうか?何か良い方法を思いつきましたか?お風呂の浴槽にお湯を貯めない?浴槽には約180〜200lの水が入るのですが、確かに大量の水を使いますね。しかし、お湯を貯めないということはシャワーだけで入浴を済ませることになりますよね。このシャワーは1分間に約12lの水を使用するんです。だから、逆に水を使いすぎてしまう恐れがあり、節水にならない可能性があります。色々な節水方法があるでしょうが、こうやって私たち一人一人が自覚を持って、水について考えることが大きな一歩だと思います。世界的な視野を持って、身近なところから行動することで、水に関する問題は軽減されていくのではないでしょうか。「Think Globally, Act Locally」ですね。この講義を通して皆さんが水に関して少しでも関心を持ってくれたら、うれしいです。私もこれからさらに、水について知識を深めるだけでなく、身近なところからできることを始めようと思います。

 以上で、今日の講義は終わりです。ご清聴ありがとうございました。

 

参考


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