水について Q & A 2002-03

質問・コメント あれこれコーナー      その1 

その1:「自然とは何か?化学とは何か?」

その2:「水を冷却する」

 

質問・コメントは吉野輝雄までyoshino@icu.ac.jpまで
(このコーナーは, 2002-03 「自然の化学的基礎 NSIII」のクラスのために開いています)。

 

第1章 自然とは何か?化学とは何か?

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Q1.私の体温は34.9℃です。これでは37℃で行われるという代謝(メタボリズム)が起こらないのですか?

A. 起こっています。だから生きているのです。37℃は人間の平均体温という意味で使っただけです。代謝、つまり体内化学反応の結果、反応熱が生じて体温が37℃付近に保たれるのです。身体の表面近くと内部では温度が多少違うのは当然で、その環境の応じた生体内反応が程良い速度で起こっている時に、身体は健康であるといってよいでしょう。

Q2.消化とは食物と水とを反応という説明がありましたが、一体どういう反応なのですか?


A.
 主な食物(栄養素)として炭水化物、タンパク質、脂質の3つを考えましょう。

炭水化物の代表であるデンプン(米、ジャガ芋、トウモロコシ)は、数万個のブドウ糖が高分子となったもので、アミラーゼという消化酵素の助けを借りて水と反応すると、個々のブドウ糖になります。タンパク質は、20種のアミノ酸がいろいろな順にいろいろな長さにつながった高分子です。トリプシンなどのタンパク質加水分解酵素の助けで水と反応すると個々のアミノ酸になります。脂質は、脂肪酸とグリセリンからできている化合物で、リパーゼという酵素の助けを借りて脂肪酸とグリセリンになります。

これらの反応の結果生成する物質は、栄養源として利用され生命活動を支えているのです。また、反応の際に反応熱が出て、体温を支えます。

Q3.オゾンO3はどのような化学反応で(成層圏上層で)生じるのですか?
どのような化学式で表されるのですか?

A.
 酸素ガス(O2)に紫外線(光エネルギー)が当たるとオゾンが生成します。

    3O2 +光---------> 2 O3

生成したオゾンは波長の異なる紫外線を吸収して酸素に戻ります(この過程が地上に強い紫外線が届くのを防いでいるのです)。ところが、フロンガスが成層圏に昇ると、フロンがまず紫外線で分解し、その結果、オゾンから酸素への変換反応が連鎖的に(急速に)起こるので、オゾン層が薄くなり(オゾンホールができる)、地上に強い紫外線が降り注ぐことになるのです。

 

Q4.オゾンホールは水環境に影響を与えるのでしょうか?


A
. オゾンそのものは水と化学反応しません。オゾンホールの結果、地上に多量の強い紫外線(光エネルギー)が注がれると生体を作っている分子を破壊され、異常(皮膚ガンなどの病気など)が生じ、死につながることもあり得ます。しかし、水中に棲む生物への影響は小さいでしょう。

オゾンホールの生成により、強い紫外線が降り注ぐと地上の動植物が影響を受けることは十分考えられますが、現時点では、因果関係が証明されている例はないそうです。注意深い調査を続けていく必要がある、と言えます。

  

Q5. 体内でおこる代謝はすべて「水」を利用して行われているのですか?


A.
 ほとんど全てと言ってよいでしょう。水が反応物として全てに関係しているということではなく、代謝(生体内物質の変化)が酵素の働きを必要としていることを考えると、酵素が働きを発揮するためには水で囲まれた特定の立体構造をとっていなければならないからです。また、すべての生体反応は、水を含む細胞の中で起こっていますので、水が代謝の場を提供しているという意味でも水を利用していると言ってよいでしょう。

 

Q6. 料理で塩やしょう油で味付けするのも「化学反応」ですか?


A.
 違います。物質同士の混合です。食材にしみ込んだり、食材から何らかの成分がしみ出して「おいしい味」になるのだと思います。浸透圧という物理変化が起こっていると考えられます。しかし、料理の技には、物理・化学の変化で単純に割り切れない深さがあるので、こんな説明は、味を損ないますね。

 

Q7. パンを焼く(焦がす)ことは化学反応ですか?

A. パンの主成分はデンプンです。デンプンを高温に加熱すると、デンプンの一部分が分解して“焦げ”物質と水を生じます。ですから、化学反応と言えます。

 

Q8. 酵素は変化してしまった後はどうなるのですか?


A.
 酵素は触媒なので、それ自身は反応の結果消費されることなく、別の反応物の生体内化学反応に何度も使われます。しかし、無限回とはいかず、何度も働いた後に、“失活”します。つまり、機能を発揮するための必須条件である一定の立体構造がくずれてしまった(変性)タンパク質になっていまうのです。こうなると、体内では、タンパク質分解酵素が働き、個々のアミノ酸に分解され、再利用されます。

  

Q9. 「酵素風呂」というおがくずのようなものの中に10-20分入ると体によい/代謝があがるといわれていますが、これはどういうことですか?


A.
 初めて聞きました。Web-pageで調べたところ、檜のおが屑の中に「酵素」(何かは不明)をいれると、発熱反応が起こり、蒸し風呂のような状態となる、とありました。檜の成分が皮膚に作用するようです。例えば参考までに、下のWeb-pageを開いてみてはどうでしょう。

http://www.h4.dion.ne.jp/~rakuraku/kousotoha.htm

 

Q10. 「神を畏れる」というのはキリスト者ならではと思いますが、先生の中では“神”と“自然界”はどう関わっているのですか?「自然とは何か」の図で、“中心”とあるのは何ですか?“自然界”における中心点とは一体何ですか?


A.
 クラスが始まったばかりの今の時点では答えないことにします(逃げているわけではありません)。皆さんそれぞれが考えてみて下さい。図は概念図です。クラス最後の回に私の見解を述べます。

 

Q11. 水素から水が生成することを酸化と言わないのですか?酸化と燃焼の違いは何ですか?


A.
 水素が酸化されて酸化物である水が生成します。燃焼は、「何かを燃やした時に熱を利用する」場合に使う言葉で、化学反応の種類としては酸化です。鉄が錆びるのは、鉄がゆっくり酸化されて酸化鉄を生じる反応で、燃焼とは言いません。しかし、鉄も燃えます:花火がよい例です。

  

Q12. 塩が水に溶けた時に物質は変わってない、ということですが、水の中でどんなことが起こっているのですか?


A.
 食塩(NaCl)の場合には、Na+イオンとCl-イオンに別れ、水分子の間に均一に分散します。水を取り除くと、始めに入れた量の食塩が回収されます。
  砂糖が水に溶ける場合には、砂糖分子が水の中に一に分散した状態が溶解で、水と反応しません。甘味は砂糖分子が味を感じる細胞と結合した時に感覚されるだけで、砂糖水から水を除くと再び砂糖が現れます。

 

Q13. 石にも水が含まれているという話には驚きました。本当ですか?どの位の割合で含まれているのですか?


A.
 有名な例としては、青い結晶の硫酸銅は、組成がCuSO4・5H2O(水分が36%)で、強く熱すると水が除かれて無色の結晶に変化します。
   オパールの化学組成はSiO2・nH2O、やはり水和塩です。
   セメントは、見かけ上、「石」ですが、かなり水分が含まれている事は生活経験から理解できるでしょう。

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