水について Q & A 2002-03

質問・コメント あれこれコーナー      その2 

その1:「自然とは何か?化学とは何か?」

その2:「水を冷却する」

 

質問・コメントは吉野輝雄までyoshino@icu.ac.jpま で(特に、答えがおかしい、納得いかないという場合に)。
(このコーナーは, 2002-03 「自然の化学的基礎 NSIII」のクラスのために開いています)。

 

第3章 水の自然科学

  水を冷却する     

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Q1.自然界の物質がすべて液化、固化するという状況は、あくまでも人工的なものですよね?


A.
 宇宙空間の平均温度は、-270℃(3K)だと言われています。その意味では、決して人工的な条件ではなく、自然な状況と言 えます。
  太陽系惑星の表面温度を比較してみるとおもしろいですよ(クラスの最後で説明しますが、自分でデータを調べてください)。
  地球の平均気温 15℃がいかに特別な条件下にあるかが分かるでしょう。

 

Q2.宇宙は絶対零度だと聞きましたが、本当ですか?


A.
 上で答えた通りです。宇宙空間に浮かぶ恒星の温度は1万℃を超えます。内部は数千万℃と言われています。超新星の爆発時に は、 
  さらに高温になります。しかし、茫漠とした宇宙空間の温度は平均すると-270℃(3K)と極低温の世界なのです。

  

Q3. 絶対零度以下の温度は存在しないということでしょうか?

A.
 自然界の最低温度を絶対零度と定義し、それが、-273℃であることを実験的に見出したのです。温度とは何か?に関わる問い でもあります。
  絶対零度では全ての分子が固体となり、移動運動を停止します。振動運動だけは残っている、というのが「不確定性原理」が教える絶対零度の世界です。

 

Q4.水素はどんな形をしているのですか?


A. 水素分子は水素原子が2ヶ結合した物質で、ほぼ球形で楕円球のかたちをしています。

  

Q5.外気温が0℃ちょうどの時、水は凍るのでしょうか? 氷は解けるのでしょうか?それとも何の変化もしないのでしょう か?


A.
 水を冷却して行って0℃に達した場合を考えますと、外気温が0℃であれば水の ままですが、外気温が0℃以下であれば氷が出来はじめ、氷になっていない水が残っている限り0℃に保たれます。氷点0℃というのは液体状態と固体状態の間 にエネルギーの差がない温度なのです。

Q6. 氷は外気温と同じ温度になるということですが、一体何度まで下がるのですか?


A.
 上の問いに対する答えの続きになります。外気温が0℃以下であ ればいつか完全に氷結し、その後は、外気温まで下がります。外気温が、仮に絶対零度-273℃であればその温度にまで下がることになります。

Q7. 液体窒素をビーカーに注ぐとすぐに気体になってしまうと思っていたのですが、そうではありませんでした。どれ程の間液 体でいられるのですか?(なぜ液体窒素を見ることができるのですか?)


A.
 液体窒素の沸点は-196℃ですから、ビーカーに注ぎ入れる と、すごい勢いで気化します。しかし、ビーカーが冷えると気化速度が遅くなり、周囲は室温にある空気で温められますが、しばらく液体状態として留まります ので目で見ることができるのです。液体が気化する時に周囲から熱を奪う(冷却する)ので、それによっても蒸発が抑えられています。 

Q8. 液体窒素で固まったバラは生き返るのですか?(一旦凍したものは、常温に放置すると元に戻るのですか?)


A.
 バラは凍結すると細胞が破裂してしまうので、室温に戻すと死んだ状態になります。花瓶にいれてもしおれるだけです。
  因みに、クラスで見せたのはバラではなく、サザンカの花でした。

Q9. 液体窒素で凍らせた物は食べられますか? 液体窒素を飲むとどうなりますか?


A.
 液体窒素は別に毒ではありませんので、きれいな容器にいれた液体窒素で凍結させたものであれば、食べられます。しかし、当然のことながら凍結したものは-196℃ ですので、そのまま口に入れると凍傷を起こします。解凍してからであれば食べられるという意味です。Q8の答えで説明したように食物(特に植物)は凍結す ると細胞が壊れるので味が変質します。液体窒素そのものを飲むということは、何を意味するか 考えてみて下さい。

Q10. 窒素ガス入りのゴム手袋(風船)を液体窒素に入れた時しぼんでしまいましたが、カチカチに固まったゴム手袋が外に出し た後に、なぜあんなに早くふくらむことができるのでしょうか?


A.
 液体窒素と室温との温度差が200℃もあるのです早く戻ると考えれます。また、ゴム手袋がカチカチに固まったといっても、非 常に薄いので、室温の空気ですぐに暖められてしまったためでもあります。

Q12. 2つ以上の混合物を凍らせるには、各々の物質を凍らせるよりも温度を下げなければならないと思うのですか、実際にはどうなのですか?


A.
 2つの物質が均一に混ざった物質の場合には、凝固点降下により融点がそれぞれの純物質よりも低くなります。

Q13. 海水は0℃では凍らないということですか?


A.
 そうです。海水は3.5%の塩溶液なので、-2℃まで下がらないと凍りません。実験で観た通りです。

Q14. 塩水湖(死海のような)が凍った時、塩水の温度は-2℃よりも低くなるのですか?

   実験に使っていた桶の水は-5℃なのにどうして凍らないのですか?


A.
 塩濃度が濃くなればなるほど凝固点が低くなります。 濃い食塩水に氷を入れてよく攪拌すると-10℃以下の温度にまで冷やす ことができます。
  南極にドン・ファン池という34-39%の塩(主成分は塩化カルシウム)が溶けている池があり、年中凍結することがないそうです。
  実験で使った桶は、氷と食塩で-5℃まで下げました。  

Q16. なぜ水(氷)に塩を加えると温度は下がるのですか?


A. これはかなり難しい質問です。 水に塩を溶解するには熱エネルギーが必要です。氷水の場合には、加熱をしませんので、その熱を周囲から奪う必要があり、
  その熱エネルギー分だけ冷却されると考えられます。
(後に、もっと詳しい説明を加えます。1/18/2002)。

Q17. どのように-200℃近い温度環境をつくり出すのですか?

  
A. これも難しい質問ですが、要点だけを下に記しておきます。

超低温の実現方法 : 冷却法
●室温 → 0℃    氷で
●0℃ → ー20℃   氷+寒剤(食塩、塩化カルシウム)
●ー20℃ → ー80℃  フレオンガスの断熱膨張(電気冷蔵庫)
              または、ドライアイス+アセトン
●ー80℃ → ー196℃ 液体窒素
           (-80℃の空気の断熱膨張で)
●ー196℃ → ー270℃ 液体窒素の断熱膨張
●ー270℃ → ー273℃ 断熱消磁法

Q18. バケツの水が表面から凍るのはなぜですか?

   
A. 水の場合、液体状態よりも固体(氷)の方の密度が小さいからです。この ような物質は自然界には、水以外にほとんどありません。

Q19. 水が氷に変化していく際、均等に同じ厚さで凍っていくのですか?


A.
 容器(バケツ)を氷点下の空間に静置しておけば、均一に上から段々下に向かって凍っていきます。

 

Q20. 氷山は海水が凍ったものですか?それとも真水ですか?


A.
 氷山は、実は、塩を含まない氷です。不思議ですね。水がゆっくり冷却されて氷の結晶になっていく時に、水分子だけが集まると 最大の分子間引力が働きますので、他の物質(塩化ナトリウム)は氷結晶の中に入れないのです。海水を急冷すると、透明でない白い固体となります。これは、 小さな氷の固まりと塩との混合固体です。いわば、”シャーベット状態”で、透明な氷山とは異なります。

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