2.予備実験概要
@目的
 
 本実験に先立ちまずは実際に数人の音声を採取し、解析を行ってみることにした。
  予備実験の目的
     (i)使用する音声解析ソフトの操作方法と解析画面の見方の習得
     (ii)人の声を構成する要素(Db値・ホルマント・スペクトル分布等)に関する予備知識の獲得
     (iii)解析結果の検証
     (iv)「聞き取り易い声」を定義づける要素がどのようなものであるのか、ある程度の予測・仮定
     (v)これらの結果に基づいた本実験の詳細な進行方法の決定

A方法
 
 ・本館157教室にノートパソコンと小型マイクを用意 
 ・任意に集められた被験者25名(学生、男性5名・女性20名)に指定された同じ文章を読み上げてもらう
 ・音声解析ソフトを使って録音
 (録音環境は、天候=晴れ・時刻=ランチタイム・雑音=あり・・・窓は開けられた状態)
 ・録音された音声の解析をWavesurfer (次のページの機材の項目参照)を使って行う *解析画面サンプル*
 ・実験者5人が主観的な判断で25個のサンプルを「聞き取り易い」・「聞き取りにくい」2グループに分類、
 「聞き取り易い」と判断した人数が最も多かった上位3つのサンプルの解析画面を「聞き取りにくい」と判断
  されたサンプルのそれと比較・検証、その特徴を調べた。

B結果

 データファイルを参照

C議論

 以上の結果から、人の声には夫々に多様で明確な特徴が見られることが分かった。
 なかでもスペクトログラムの分布や色の濃さにはよりはっきりとした違いが見られ、
 「聞き取り易い」と判断された声の方が「聞き取りにくい」とされたものよりも
 分布に纏まりがあり、 くっきりとした模様を描いていたため、
 これらの特徴が「聞き取り易さ」を決定する要素と関係を持つのではないかという仮定が導き出された。

D結論
 
 解析ソフトについては、実験者全員が問題なく使用でき、詳細かつ明確なデータが導き出せるため
 引き続き本実験でも用いることとした。本実験では、議論で導き出された仮定をもとに更に詳細な検証を行う。
 具体的には、
     1.Db値や声の特徴等他のデータについても詳細な比較・検証を行う
     2.アナウンサーなどプロの声との比較
     3.ノイズの除去等スペクトルの直接操作
 (しかし、時間的制限を理由に上記2.3.に関しては行われていない)

以上の予備実験から、聞き取りやすさ/にくさは一定の基準を持っているという前提のもとに、
本実験ではエネルギーの集中度に着目した実験を行うことにした。
予備実験では比較的長い文章を読んでもらったために、分析が困難であった。
しかしその結果としてフォルマントへの集中度という要素に着目できることがわかった。
すなわち「読み方」ではなく「声の質」自体に聞き取りやすい声の要素が見られるのではないか、
という推測が可能になった。
よって、長い文章を読んでもらうのではなく(息継ぎの方法や、ポーズ、速度などの読み方を分析するのではなく)
声の質自体を、短い単語の比較によって分析することにした.

戻る  進む