5.結果と考察その1


それぞれ、左の写真のピンク色の円が体全体の重心を示す。

1.ロープを引く動作


 
重心から垂直に直線を引くと、両足の間、後ろ足(右足)の近くを通る。


考察
パントマイムにおいては、重心は両足の間(後の足にかなり近い)にあることが確認された。
重心が両足の間にあることにより、人間は倒れずに立った状態を保持できる。
実際に引いている場合には、後の足を上げることは可能であるが前の足を上げることは不可
能である。つまり、力は前の足にかかっている。また、引くことで後ろ向きにトルクがかか
っているので、その姿勢でロープから手を離すと後に倒れてしまう。しかし、ロープを引い
ているのでその力の反作用で倒れないでいられる。
一方パントマイムにおいては、ロープを実際に引いているわけではないので、同じ姿勢をと
ろうと思っても後に倒れてしまう。パントマイムをしているときは、反作用の力を使えない。
そのため重心を両足の間に置き、倒れないようにしている。さらに引いているように見せる
ため、重心の位置は後ろ(後ろの足の近く)にしていると考えることができ、力は後ろにか
かっていることがわかる。また、前の足から頭にかけては一直線に近い形をとっており、こ
れも後ろに体重がかかっているための、物を引いているように見せるためのテクニックであ
ると考えられる。
加えてビデオから、物を引いている場合の手の位置は引き始めた場合でもほとんど動いてい
ないことがわかる。実際にロープなどを壁などに固定し、引いた場合、手の位置は変わるこ
とがない。このことから、引いている動作を表現するために、体を後ろに倒したり、重心を
後ろに持っていっても手の位置は最初にあった場所から動かさないようにしたりして、より
物を引いている動作に近づけていると考えられる。なお物体を引く動作では、重心が両足の
間になければならないため、パントマイムの場合に両足をそろえてしまうと、実際には物体
を引いていないため立っていることができなくなる。


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