International Christian University

国際基督教大学

GEN011 N1: Foundations and Concepts of Physics (A)

18th November 2014

Professor Hideki Okamura


Group 2 Members(12):

Egawa Naoko, Hasegawa Natsuki, Iiyama Naoko, Ikoma Tsubasa, Kunishige Haruki, Ozawa Chiharu,

Saito Kazuki, Sato Akira, Soma Hisato, Yamazaki Takahiro, Matsumoto Yumiko, Matsumura Yuji


1序論(先行研究、背景、目的)

テーマ「ICU生の好みの顔とは何か」


わ たしたちが、美しい顔、魅力的な顔と認識する時、そこにはどのような要素が働いているのだろうか。過去の研究を調べてみると要素は多種多様である。「好み の顔」に関する先行研究として以下のようなものが見つかった。① 顔の対称性が高いほど魅力が増す(尾田2004)、② 平均的とされる顔に一番魅を感じる(高橋2012)、③ 顔の魅力という感性情報の判断にたいして、目と眉の領域が重要なパーツである(加藤、阿麿、森岡、赤松1998)、④ 好ましいと思うパーソナリティの人を美しいと感じる。What is good is beautiful (Little, Burt and Perrett 2006).⑤ 性ホルモンマーカー(顔の骨格、パーツなどに現れる男らしさ、女らしさ)。女性の場合、女性性の高い顔が好まれ、男性の場合は中性的な顔が好まれる傾向が ある(高橋2012)。

当 初、「美人・イケメンとはいかなる要因によって決まるのか」というテーマで 考察を進めていたが、普遍的な「美人」「イケメン」を決定する要因を追及するのは、非常に難しいと判断した。更に、上記先行研究の被験者は不特定多数であ るが、当実験は被験者の条件をより一致したものとするため、被験者をICU生に限定するべきという結論に至った。また、先行研究において、社会的バイアス が被験者の好みの顔に影響したのかどうかについての報告はない。わたしたちグループ2は、ICUの学生たちという特定の小集団を対象にすることにより、よ り正確なデータを収集し、「ICU生の好みの顔」は、どのような要素によるものか、先行研究を踏まえ、明らかにしていく。


2実験1


紙媒体フォーム


リザルト



目的

「ICU 生の好みの顔とは何か」に変更する前の、「美人・イケメンとはいかなる要因によって決まるのか」というテーマの下に考察を進めていた。「美人」や「イケメ ン」という判断は生物学的な本能に依るのか、或いは、時代によって「美人」「イケメン」の基準が異なることから、社会的なコードがその判断に影響を与えて いるのかを確かめるため、社会的コードから切り離して、純粋に顔のみで判断された「美人・イケメン」が一体どういうものであるか解明する。


仮説

AKB は「総選挙」のファンによる投票で順位がつけられる。そのランク付けは「顔の好み」という本能的なものと「言動から判断される性格の好み」という社会的な ものの二つを基準に行われると推測される。故に、AKBを知らない人にAKBのメンバーを顔の好みで判断してもらえば、社会的コードから切り離された本能 的に判断された「美人」がどういう顔であるかを判断できる。


方法

2014年度「AKB総選挙」においてランク付けされたメンバー上位80人を、順位ごとに16人のグループに分ける。

各グループから、髪型に類似性があり、かつメディア等への露出が少ない者をそれぞれ1名計5名選出する。

(髪型の類似性を求めたのは純粋に顔のみで判断してもらうため。メディアへの露出が少ないものを選んだのは無意識に雑誌・広告・TV等で見てしまっているケースを減らすため)

顔部分(首から上)をトリミングし白黒(肌の色で判断されるのを避けるため)にしたうえで、無作為に並べ直し印刷する。

なるべく多様な背景を持つ人を選び、アンケート形式でランク付けしてもらう。メンバーを知っていた場合、結果から除外する。


なお、実際に選出されたメンバーは以下の通りである

11位 宮脇 咲良

27位 朝長 美桜

44位 磯原 杏華

63位 内山 菜月

73位 矢方 美紀


結果

以下の表は「総選挙」での順位とアンケートによる順位の比較である

(32人)

議論

被験者の男女における人数の偏りはICUにおける男女の人数差とほぼ一致するので考慮する必要はない。

磯 原以外の4人に関しては概ね「総選挙」の結果と一致したが、「総選挙」の結果では5人中3位であったはずの磯原は他と大差をつけて最下位であった。なぜ磯 原についての結果がAKBを知っている人とそうでない人の間で異なるのか調べるため、磯原について調べを進めると、磯原はアイドルとして活動を開始した当 初はなかなか人気がなく、2012年度までの4つの「総選挙」では圏外であり、圏外のメンバーで構成されるグラビア企画などに登場しても人気が上がること はなかった。しかし、2012年から髪をショートにし、ツアー等の公演への取り組みを精力的に行い、同期で仲の良かったメンバーが引退するのを受けそのメ ンバーの分まで一層活発に活動をしたことで人気を博し、2013年度以降の「総選挙」では12000を超える票を獲得した、という経緯があることが分かっ た。

これはICUでの調査と矛盾しない。ICUの調査では純粋に「顔」で判断してもらった。AKBファンにとっても、磯原に限らず、AKBとして活動を始めたばかりのメンバーを判断する基準は「顔」しかない。磯原の初期の人気とICUでの人気は一致してしかるべきである。

こ こから、磯原はビジュアル的には決して「美人」と言える顔ではないが、しかしそのひたむきな態度がファンの間に知られることで人気を得ているのだと推測さ れる。 つまり、人は好みの人物を選ぶ時、その人物の性格という極めて社会的バイアスのかかったものを基準に選んでいるが、少なくとも現代日本の若年層(AKB ファンもICUでの調査対象も若い人物が多い)においては、単純に「顔」での判断を要求されたとき、何らかの共通した基準が存在するのだと判断される。

なお他の4人に関しても、彼女等はアイドルとしての活動開始から一定の評価を得ていたので、はじめからビジュアルで評価されていたのだと推測される。


3.実験2


Webフォーム

https://docs.google.com/forms/d/1rS8HK6bn86E6Wubt8z1xnXqLqvnX2ksBFOytOefSNrM/viewform


Web フォーム

https://docs.google.com/forms/d/12ZUB0wp7rmK7GOp7bQ0_zcPU1HYuEBph1zIplxNkQqs/edit


紙媒体フォーム


リザルト


「美人・イケメンの定義」を考察した実験1の結果を受けて、実験の範囲を狭めるために「ICU生の好みの顔」にテーマを変更した。


目的

ICU生がどのような顔を好み、その理由は何かを、「観察」として調べるために実験をおこなった。

仮説

   今回はデータ収集のための観察実験であるため仮説なし。

方法(Method)

ア ンケートを手法として用いた(原本は、本レポートに添付)。アンケートの形式は、同じ質問内容で、紙とWebで実施(Webは英語ver.あり)。被験者 は、ICUの 学生のみに限定した。質問内容は、「あなたの「好み顔の有名人」を男女それぞれあげてください(複数回答可)」と「なぜその顔が好みなのかそれぞれ理由を 挙げてください(自由回答可)」。いずれも、記述解答とした。また、被験者情報として、「海外滞在経験」、「ナショナルアイデンティティ」、「性自認」、 「恋愛対象」を聞いた。

結果(Result)

    被験者81

    結果詳細(Excelで本レポートに添付)

議論(Discussion)

・ まずその顔を好む理由を、「雰囲気」と「パーツ」に分類した。雰囲気とは、「かわいい」など顔全体の雰囲気を理由として挙げたものであり、パーツとは、 「目が大きくていい」など特定のパーツを理由として挙げたものである。被験者の条件別の好みに関して、以下の三点が結果詳細の表からわかる。(下図、凡 例。橙:雰囲気。黄:パーツ。紫:整っている。)

   ①結果から、ICU生(男女問わず)が好みの顔を選ぶ際に、被験者男性女性で好みの理由(雰囲気、パーツ)の比率がほとんど同じで    ある。

  ② 同じように、海外経験の有無によっても、被験者男女で好みの理由(雰囲気、パーツ)の比率がほとんど同じである。

  ③ 性自認が男女双方とも、パーツよりも雰囲気を重視する。ただし性自認が男性である場合、性自認が女性である場合よりも雰囲     気を重視する傾向がある。


・ 先ほど分類した、雰囲気とパーツの理由を、被験者男女別にさらにいくつかのカテゴリーに分けて、ICU生の好みの理由を分析した。

     男(雰囲気)・・・親しみやすい31票、男らしい27、色気がある12、子供っぽい11、その他7

     男(パーツ)・・・ 目17、顔の形6、口5、髪4、頬1、肌2、鼻4、毛4、眉毛2

     女(雰囲気)・・・可愛い34、きれい26、かっこいい8、個性的8

     女(パーツ)・・・ 眉毛4、目元21、あご1、顔の形5、口8、髪2、頬1、肌3

以上より、男性は親しみやすい&男らしい雰囲気が人気で、目と顔の形が注目される部位であることがわかる。女性は可愛い&きれいな雰囲気が人気で、目と口が注目される部位であることがわかる。


・ また上記の、男(雰囲気)、男(パーツ)、女(雰囲気)、女(パーツ)のそれぞれの理由で選ばれた俳優、女優の一覧は以下の通りである。この著名人をもとに、次の実験を行う。


     男(雰囲気:親しみやすい)・・・原田泰造、三浦春馬、大野智、向井理、上川隆也、山下智久、西島秀俊、小栗旬、綾野剛

     男(雰囲気:男らしい)…加瀬亮、オーランド・ブルーム、藤木直人、 岡田准一、岡田将生、坂口健太郎、加瀬亮、チャンミン、アン                     ゼル、古川雄輝、田辺誠一、小出恵介、竹野内豊、藤木直人

     男(パーツ:目)・・・西島秀俊、綾野剛、鈴木亮平、高良健吾、ジョニー・デップ、染谷将太、アンゼル エルゴート、田辺誠一、小出                     恵介、竹野内豊、藤木直人、ドリーミーメドヴェージェフ、藤原竜也、森山未來

     男(パーツ:顔の形)・・・加瀬亮、佐々木蔵之介、玉木宏、舘ひろし

      女(雰囲気:かわいい)・・・黒木メイサ、上野樹里、ともさかりえ、本田翼、綾瀬はるか、相武紗季、小泉今日子、宮崎あおい、蒼井                        優、永作博美、能年玲奈、新垣結衣、上戸彩、宮崎あおい、岸本セシル、戸田恵梨香、木村文及、夏                         目三久、香里奈、倉科かな、島崎はるか、石原さとみ、トリンドル

     女(雰囲気:きれい)・・・水原希子、嗣永桃子、黒木メイサ、キャメロンディアス、新垣ゆい、上戸彩、吉高由里子、水川あさみ、木                      村文及、北川景子

     女(パーツ:目)・・・水原希子、宮崎あおい、本田翼、島崎遥香、石原さとみ、能年玲奈、堀北まき、杉﨑花、玉城ティナ、ウィノナ・       ライダー、満島ひかり

     女(パーツ:口)・・・小泉今日子、石原さとみ、松嶋菜々子


4実験3


Webフォーム

http://www.smaster.jp/Sheet.aspx?SheetID=97243


被験者アンケート


紙媒体フォーム


Webリザルト


リザルト


目的

実験2で分かったことを検証する


1. 顔のパーツよりも雰囲気が重視されている

2.男子は雰囲気、女子はパーツを重視する

3.女性はかわいい系のほうがきれい系よりも好まれる

4.同性に対しても異性に対しても見ている要素は同じ


仮説


実験2より、人は顔のパーツよりも雰囲気を重視するという結果が出た


○仮説1:顔のパーツを変えた画像では特出して人気な画像はない


実験2でとあるパーツが美しいからその芸能人が好きだと答えられていたパーツを、日本人の平均顔といわれている顔に合成した、それをもともとの日本人の平均顔と比較したとしても、編集された画像が特別人気を集めるわけではないことが予想される


○仮説2:全体的には雰囲気が重視されることが多いが、女子生徒はパーツを重視する


実 験2ではパーツで判断するか、雰囲気で判断するかの割合に大差はなかったことからこの仮説が出される。(傾向としては男子生徒よりは女子生徒のほうがパー ツを重要視する割合は高かったが、全体的には雰囲気を重要視するという声が多かった)しかし、前回の実験では男子生徒の被験者が少なかったことから今回の 実験で確証する



○仮説3:同性と異性に求めるものは同じ


パーツを重視する人は同性に対しても異性に対してもパーツが編集されているものを選ぶ傾向がある



方法(Method)


実験3では、アンケート方式で好みの顔を被験者に選択してもらった。(アンケートフォームは、上にリンクあり)

質問は、以下の二種類である。


1) パーツに関しての設問


 ・実験2で好みの顔として挙げられた著名人の、顔のパーツを特徴ごとにそれぞれ合成し、そのパーツを平均顔に合成した顔

 ・平均顔

 以上二つを選択肢としたもの。(設問1~設問4ごとにパーツの部位および特徴は異なる)


2)顔全体の雰囲気に関しての設問


 ・顔全体の雰囲気に関して、実験2で好みの顔として意見の集まった著名人の顔全体を、ソフトを用いて合成した顔。

 ・平均顔

 以上二つを選択肢としたもの。(設問5、設問6ごとに雰囲気は異なる)


※ 実験2において男性で重要視されるパーツが、目と顔の形という結果がでたが、これをそれぞれ合成した結果、顔の形の合成結果が平均顔と変わらないものになってしまったため、顔の形が好みということで名前の挙がっていた俳優の顔の共通点を取った。

その結果、およびもともと重要であると考えられていた顔のパーツの仮説より、顔のイメージを作っているのは顔の形ではなく鼻ではないかという仮説のもと、再度合成を行うと、鼻に顕著な特徴が見られたため、鼻を好まれるパーツとして採用した。

※この際被験者から入手するデータとして、前回までの実験と同様に被験者の性別や海外経験も同じアンケートに記入してもらった。

※具体的な合成の手段として、最初の段階で行う顔のパーツの合成および顔全体の合成は、iOSのアプリ「平均顔合成ツール Average Face DUO」を使用し、合成し終わったパーツを平均顔に合成する際にはAdobe Photoshopを使用した。


結果

被験者数 313


1.全ての設問で男子女子ともに平均顔が最もよく選択されていた


2.男子女子の回答に差はあまりない


3.全ての回答で平均顔またはパーツを編集した画像を選択した被験者は全体の約23パーセント

全ての選択肢で平均顔を選択した生徒は17人(全体の約18%)、パーツを選択した生徒は56人(全体の約5%)。


4.雰囲気美人と雰囲気かわいいは2:1の割合で美人の方が多かった。また、雰囲気とっつきやすいは雰囲気男らしいの割合は9:5。



議論


1.平均顔が最も好まれた

すべての選択肢で平均顔が最もよく選ばれた。しかし、全ての選択肢で平均顔を選んだ被験者の割合は約18パーセント(313人中56人)にとどまった。


2.女性はパーツを重視していない

男 性も女性も平均顔を選択した割合とそれ以外を選択した割合に大きな差がなかったことから、女性が特にパーツを重要視するわけではないことが判明した。すべ ての選択肢でパーツのみ/平均顔のみを選択している人は少ないので、パーツを見ている人は男女どちらに対してもパーツを見ているわけではないということが 判明した。

パーツを代えたところで、結局人間は全体的なバランスで顔をみているため、パーツだけ代えたものはバランスが崩れてしまっているがゆえに、全体的に整っている平均顔が選ばれたと説明できる



3.雰囲気だけ/パーツだけで判断しているわけではない

全ての選択肢で平均顔を選んだ被験者の割合と全ての選択肢でパーツを編集した顔だけを選択した被験者の割合は約23%にとどまったことより、大半の人はある程度は雰囲気もパーツもどちらも見ているということが分かった。


4.人々は女の人においてはパーソナリティを重視しているのではないか。

(実験②において美人:かわいい=2:3だったのに実験③では2:1である。実験②においては顔自体の好みを聞いたにもかかわらず、パーソナリティに影響されていたため、実験③のように顔自体で判断する際とは結果がくい違うと説明できる)

→実験1でパーソナリティについて考えたが、そこも関わってくると考えることもできる。


5.写真自体の質に問題があったのではないか

雰囲気かわいいと雰囲気男らしいは合成の結果暗い写真になってしまったため選ばれにくかったのではないか。(明度とひげ、前髪など)


5結論


  当初の目的だった「ICU生好みの顔」とは、実験3の結果によって、女の人は「美人顔」、男の人は「親しみやすい顔」であることがわかった。(下記画像参 照)実験②において、”あなたの「好みの顔の有名人」を男女それぞれ挙げてください。”と質問したのにも関わらず、パーソナリティについての言及があった こと。それに加えて実験②において美人:かわいい=2:3だったのに、実験③では2:1であり、これは統制されてない条件下ではパーソナリティを考慮して しまうからと説明できる。この二点から分かる結果として、「好み」という概念には必然的にパーソナリティが関わるものであり、その二つは切り離せるもので ないことがわかる。また、好みの判断の要素は個々のパーツではなく、全体の雰囲気から判断されていることが実験2と3の比較からわかった。

ここから、ICU生が「好みの顔」を判断する基準は、パーツ等の個別の要素ではなく、パーソナリティや雰囲気と言った包括的な要素によって決定されている ことがわかった。この結果は先行研究と比較しても相違なく、ICU生の好みの傾向は極めて世俗的な、一般的なものであることが分かった。





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