特別展予定
特別展示室では、収蔵資料をもとにした企画展が、年に3回開催されています。テーマは民芸や考古学に関連したものが中心ですが、その他にも皆様に楽しんでいただけるよう幅広くテーマを選んでおります。
江戸時代の化粧は白粉(おしろい)の「白」、唇に引いた「紅」、そして黒髪やお歯黒の「黒」に象徴されると言われ、本展示では、その化粧を施すために使われた道具類や調度を当館コレクションから約148点選び展示いたします。湯浅八郎博士は生前、多くの民芸コレクションを収集し当館に寄贈されましたが、その中には江戸から明治にかけて使用された整髪油を入れる小さな油壺(あぶらつぼ)、銅製の柄鏡(えかがみ)、櫛(くし)や笄(こうがい)など、粧いの道具も含まれています。
今回の特別展ではそれらに加え、今では珍しくなったお歯黒道具、髪結いが携える道具箱の鬢盥(びんだらい)、紅化粧を施すための筆や紅入れ、化粧道具を収納するための鏡台や手箱を展示いたします。庶民が日常生活で使用したシンプルな黒塗りのものから婚礼調度として誂えた豪華な蒔絵の鏡台や化粧道具一式を通して、江戸時代の化粧文化の一端をご紹介できれば幸いです。
* 5月11日開催の公開講座「江戸の衣装革命」 録画動画を公開しました![詳細はこちら]
本展示では、日本有数の旧石器時代遺跡の密度の高さで知られる野川流域の暮らしを取り上げます。特にICU キャンパスのある野川中流域は、X層という日本列島最古級の時代から、Ⅲ層という旧石器時代終末期までのほぼすべての層より、資料が豊富に出土する地域として知られています。今回、この地域の資料を集成し、層位と地点により大きく異なる石器の違いが何を意味するのか、また間氷期と氷期の環境変動のはざまに生きた人類の具体的生活の営みについて、一般向けに分かりやすく解説します。
* 9月21日に公開講座「野川中流域の旧石器時代 人と文化」を開催します。[詳細はこちら]
湯浅記念館の所蔵コレクションから、明治時代の浮世絵をご紹介します。
* 1月25日に公開講座「諷刺画が語る日本と西洋の出会い」を開催します。[詳細はこちら]
過去の特別展
本展では資料のかたちに着目し、「円」の形状をテーマに、収蔵品のうち近年まとまった展示機会が少なかった
展示は二部構成で、前半では「円」の形状である鐔と絵皿とともに、鐔や絵皿が登場する役者絵・おもちゃ絵などの幕末・明治の浮世絵を展示いたします。後半では、鐔と絵皿以外の「円」の形状や図柄の資料を展示いたします。
本展で主に取り上げる鐔と絵皿は、基本のかたちが円であるほか、似通う要素は多くありません。鐔は刀剣に取り付ける金工品、絵皿は日常生活の中で飾りや食事に用いられた陶磁器。素材はもとより、主な使用者や使用が想定される場面など、多くの部分が異なります。しかし同じかたちだからこその共通点もあり、そのひとつが、限られた円形の空間での装飾や表現が求められたことです。円の形状を活かして、あるいはとらわれずに、鐔と絵皿のそれぞれで技と工夫を凝らした多種多様な表現が生み出され、使用する人々の暮らしを彩りました。
素材も用途も異なる多くの「円」が集う本展では、様々な差異を越えて、かたちを通じて響きあう空間をお楽しみいただけますと幸いです。
型紙とは、柿渋で防水加工を施した和紙に文様を彫り抜いた、染色で使う道具です。生地の上に型紙をあて、粳米の糊を置いてから染めて糊を洗い落とすと、糊の部分が防染されて文様が白く染め残ります。型紙の手法は主に江戸小紋や型友禅、中形と呼ばれる木綿の浴衣地に模様をつける際に用いられました。その歴史は古く、鎌倉時代には確立していたと言われています。
通常は一枚の型紙を順次移動させて一反分の連続模様をつけますが、複雑な文様を複数枚の型紙に彫り分けて組み合わせる二枚型や三枚型もあります。文様の彫り方には突彫、錐彫、引彫、道具彫があり、それぞれの文様に適した道具と技法を用います。また柄を固定するための糸入れも、非常に高度な技術です。江戸時代中期に紀州藩の保護を受け、伊勢湾沿岸の白子・寺家一帯(現在の三重県鈴鹿市)が一大産地として「伊勢型紙」を広めたほか、京都や江戸、会津で制作された型紙も各地に残っています。
特別展「型紙 精美なる技」では、今に守り受け継がれてきた高度な彫りの技術と、型紙の文様の多様さに焦点を当ててご紹介いたします。
◎特別展に関連して、公開講座をオンラインで開催します。 【詳細はこちら】
長引くパンデミックで、海外旅行はおろか留学や帰省さえも躊躇されるようになってしまった今、自由な移動への欲求はつのるばかりです。世界中を気ままに巡りたいという思いを、持て余している人も多いのではないでしょうか。
未知の風景に出会う旅の喜びは、いつの時代も人々を惹きつけて止みません。交通手段が発達しておらず、また勝手な往来を禁じられていた江戸時代の庶民にとって、諸国漫遊は一世一代の楽しみでした。人々は有名な景勝地を描いた浮世絵を眺めては旅心をなぐさめ、寺社参詣や湯治を兼ねて仲間で費用を出し合い交代で名所を訪ねました。
コレクション展では「旅」への憧れをテーマに、各地の風景と旅人の姿を描いた浮世絵や絵皿、旅のガイドブックの一面も持っていた道中双六、実際の出立の際の身づくろいや携行品など、旅支度にまつわる所蔵品を紹介します。日常を離れてどこか遠くへ行ってみたいという人々の夢に思いを馳せ、旅の気分を味わうよすがとなれば幸いです。
また、新年の干支にちなみ、愛らしい寅の郷土玩具と、おめでたい「竹に虎」をモチーフとした染織品や陶磁器をご紹介するコーナーも。
『バンクス植物図譜』は、1768年–1771年のキャプテン・クックの第1回世界探検航海に科学班の責任者として同行したジョゼフ・バンクス卿(1743–1820)の指揮により、寄港先で採集した植物標本と、画家に描かせたスケッチや水彩画をもとに制作された植物図譜です。当初『バンクス植物図譜』は、バンクスらの帰国後に植物画(銅版画)と研究論文を合わせて出版が企画され、原版は全点制作されましたが諸般の事情により出版には至らず、バンクス卿の没後もそれらが完全な形で世に出ることはありませんでした。その後原版制作から200年を経て、植物学はもちろん、科学や歴史学の見地からも学術的価値の高さが認められ、イギリスの出版社アレクト社と大英自然史博物館の協力によって1980年代に原版を用いた彩色版画が100セット限定で出版されました。
国際基督教大学図書館は『バンクス植物図譜』の全743点を所蔵しており、1996年より順次当館にて展示紹介しています。通算7度目となる今回は、南米大陸の最南端に位置するフエゴ島で採集・記録された植物画66点を展示いたします。
バンクス卿が生きた18世紀後半は、ヨーロッパ大陸以外の新たな世界に対する関心の高まりを受けて、植物学の分野でも世界中の有用な新種の調査研究に情熱が傾けられました。精緻な描写の背景に当時の時代性が見える『バンクス植物図譜』を通じて、植物画の世界をお楽しみいただけますと幸いです。
2020年4月14日(火) – 7月3日(金) 開催中止
琉球弧といわれる日本列島西南端の島々では、数百年にもわたって、国内ではほかに類を見ない独自の祭祀が連綿と受け継がれてきました。その多くは女性が神職を務め、中には部外者はもちろん、集落内でも目にすることを禁じた秘められた儀礼もあります。二人の写真家、上井幸子(1934–2011)と比嘉康雄(1938–2000)はともに、1970年代から島々に足繁く通い、戦後沖縄の激動の時代にあって人々が辛うじて守り伝えてきた秘儀の詳細をカメラに収めました。とりわけ宮古島は、ウヤガン(祖神祭)など琉球弧でもっとも古い姿をとどめる祭祀の伝承地で、二人が撮影した写真には、島独特の精神文化が克明に写し出されています。現在、その祭祀の多くは変容し簡素化され、あるいは後継者が途絶えて姿を消してしまったものもあります。
本展は、2018年から沖縄県内各地で上井幸子と比嘉康雄の二人展を主催してきた有志団体「まぶいぐみ」(國吉和夫、小橋川共男、比嘉豊光、花城太、秋友一司、普久原朝日らを中心メンバーとする)の全面的な協力を得て、国際基督教大学で教鞭を執る藤田ラウンド幸世客員准教授が湯浅八郎記念館と共同で企画・開催するものです。上井と比嘉の作品を並べて紹介する展示は、沖縄県外では初めてとなります。二人の写真家がそれぞれの視点で捉えた貴重な記録が、揺らぎ失われつつある共同体の精神の原点を見出す大きな手がかりとなることを期待いたします。
- ●「よみがえる宮古島の祭祀 写真家、上井幸子と比嘉康雄が写した記憶」トークライブ
- このトークライブは、展示室からライブ配信する初めての試みです。本展共同主催者の藤田ラウンド幸世氏が、1970年代に撮影された貴重な写真を前に、宮古島の豊かな精神文化や自身の研究について語ります。聞き手は当館のロバート・エスキルドセン館長です。
- 出演:藤田ラウンド幸世 氏(国際基督教大学客員准教授)ロバート・エスキルドセン(国際基督教大学教授、湯浅八郎記念館館長)
- 日時:2020年6月13日 (土) 14:00~14:45
- 会場:Webセミナー(インターネットを通じて全国どこからでもご視聴いただけます) ウェブ会議サービス「ZOOM」(Webinar)を利用しての開催となります。
- 必要環境:PC、タブレット、スマートフォンなどの機器、及びインターネット通信環境
- 開催言語:日本語
静岡県生まれ。アマチュアとして写真を始め、福井県のダムに沈む村を記録し日本写真協会新人賞を受賞。沖縄が日本へ復帰する1972年から沖縄本島や宮古島を訪ね、人々の日常に親密に溶け込みながらその暮らしを細やかに活写したほか、見ることもタブーであった祭祀を含む沖縄の精神文化を真摯な眼差しでカメラに収めた。作品の多くは生前に発表されることはなかったが、遺族の元に残されていたフィルムを託され、支援者が写真集『太古の系譜 沖縄宮古島の祭祀』(六花出版)を刊行、2018年からは写真家や映像関係者を中心とした有志団体「まぶいぐみ」実行委員会が、宮古島をはじめとする県内各島で比嘉康雄との二人展を開催、知られざる活動の再評価が進んでいる。
本土復帰前の沖縄に育ち、地元の警察官勤務を経て写真家に転身、戦後沖縄を基点に近代の人間の姿を見つめ、琉球のアイデンティティを探り当てようとする作品を数多く発表した。1974年に民俗学者・谷川健一に同行して宮古島の秘祭であるウヤガンを撮影したことをきっかけに、琉球弧の各島々に伝わる民俗儀礼を長期にわたって取材・調査する。民俗学・文化人類学の面での研究成果も含め、今では途絶えてしまったものも多い沖縄の信仰の世界を、儀式を担う神女の信頼を得てつぶさに記録した業績は高く評価されている。太陽賞、日本写真協会年度賞、沖縄タイムス芸術選賞大賞など、受賞歴多数。主な刊行物に『神々の古層』(ニライ社)、『日本人の魂の原郷 沖縄久高島』(集英社)がある。
本特別展は開催を延期しました。
※特別展開催延期に伴い、関連する公開講座は取り止めとなりました。代わって、オンライン公開講座を開催いたします。
なお、本講演は当初2月22日に開催を予定しておりましたが、コロナ禍のため一旦はキャンセルとなった企画です。講師の先生のご厚意により、このたび再び開催の準備が整いました。
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本特別展は開催を延期しました。
※特別展開催延期に伴い、関連する公開講座は取り止めとなりました。代わって、オンライン公開講座を開催いたします。